40. aiko - 桜の木の下
Release: 2000
Origin: Japan
Label: PONY CANYON
Genre: J-POP
国民的ヒットシングル『花火』『カブトムシ』が収録された、彼女の代表的なアルバム。本作は言うなれば「あなた」と「わたし」の関係性をひたすら描き続ける極上のラブソング集だが、全編ブルージーな薫りを微かに纏った演奏と、彼女の歌い回しのせいで、どこかその恋愛自体に冷め切った目線すら感じさせられる。シングル曲も含めた、アルバムの全体像は思いの外暗く憂鬱な雰囲気に包まれているのだ。そしてそれ故に、「あなた」への愛を恥ずかしいくらい真っ直ぐな言葉で歌い抜いた5曲目『二人の形』・9曲目『Power of Love』が一層輝いている。
39. Ornette Coleman - The Shape of Jazz to Come
Release: 1959
Origin: US
Label: Atlantic
Genre: Free-Jazz
38. Thelonious Monk Trio - Thelonious Monk Trio
Release: 1956
Origin: US
Label: Prestige
Genre: Jazz
37. J Dilla - Donuts
Release: 2006
Origin: US
Label: Stones Throw
Genre: HIP-HOP/Instrumental-HIP-HOP
36. 三浦大知 - 球体
Release: 2018
Origin: Japan
Label: SONIC GROOVE
Genre: R&B/J-POP
日本出身の音楽プロデューサー Nao'ymtが全曲プロデュースを手掛けた実験的なコンセプトアルバム。ポスト・ダブステップやトラップミュージックなどの2010年代HIP-HOP/R&Bのトレンドを丁寧に分析した上で、新時代のJ-POPを一から組み上げたような世紀の大傑作。7曲目『飛行船』・11曲目『誘蛾灯』のようなアグレッシヴなポップ・ソングも素晴らしい完成度だが、8曲目『対岸の掟』・12曲目『綴化』・13曲目『クレーター』・16曲目『朝が来るのではなく、夜が明けるだけ』のように“静”の側面を強調した楽曲の方が、三浦大知とNao'ymtそれぞれの底知れない深みを映し出していると感じる。
そして本作最大のハイライトは15曲目『世界』。「この世界の片隅に君がいるのではない 君こそがこの世界の全て」とストレートに歌う壮大過ぎるテーマの楽曲なのだが、三浦大知の丁寧な歌唱技術とNao'ymtの並外れたクオリティのトラックのおかげで、ひとつひとつの言葉に確かな説得力が宿っている。かつてのマイケル・ジャクソンでいうところの『Heal The World』『You Are Not Alone』のような曲を、全編“日本語”で聴ける日が来るとは思いもしなかった……。
35. The Band - Music From Big Pink
Release: 1968
Origin: Canada
Label: Capitol
Genre: Roots-Rock
34. Sam Cooke - One Night Stand! - Live at the Harlem Square Club, 1963
Release: 1985
Origin: US
Label: RCA
Genre: Soul
33. Joy Division - Closer
Release: 1980
Origin: UK
Label: Factory
Genre: Post-Punk/Gothic-Rock
アルバム序盤は躁状態じみたヘッポコ演奏のポスト・パンク・サウンドだが、段々と明るいメロディーが消え失せてドン底のようなベースラインが強調されていき、終盤となる8曲目『The Eternal』・9曲目『Decades』ではバンドサウンドまでもがほぼ姿を消して、退廃的なシンセサイザーの音色だけがポツンと残される。このアルバム構成は「死」や「精神崩壊」だとか、何かとても悍ましいものを表現しているとしか思えない。
32. Bon Iver - Bon Iver
Release: 2011
Origin: US
Label: Jagjaguwar/4AD
Genre: Indie-Folk/Indie-Rock
31. Jan Jelinek - Loop-finding-jazz-records
Release: 2001
Origin: German
Label: faitiche
Genre: Ambient/Clic-House/Glitch
最高の癒しサウンド。他の音楽を聴きたくないような体調のときでも、本作だけは僕に味方をしてくれる。膨大なジャズ系レコードをサンプリングして制作されたからか、ここにはレコードを再生している瞬間のような暖かいプチプチ音が閉じ込められている。
30. 坂本龍一 - async
Release: 2017
Origin: Japan
Label: commmons/Milan/C&L Music
Genre: Ambient
29. Duke Ellington - Money Jungle
Release: 1963
Origin: US
Label: United Artists
Genre: Jazz/Post-bop
28. Keller Quartet - Bartók: The 6 String Quartets
Release: 1995
Origin: Hungary
Label: Erato
Genre: Classical
27. Syd Barrett - The Madcap Laughs
Release: 1970
Origin: UK
Label: Harvest
Genre: Folk-Rock/Psychedelic-Rock
初期Pink Floydの中心人物による1stソロアルバム。アルバム序盤〜中盤に収録された彼の代表曲よりも終盤に固まった地味めな曲の方が、当時の彼のヘロヘロぶりを強調していて好き。
Release: 1998
Origin: US
Label: Thrill Jockey
Genre: Post-Rock
25. Bob Dylan - Highway 61 Revisited
Release: 1963
Origin: US
Label: Columbia
Genre: Folk-Rock
24. Sly and the Family Stone - There's a Riot Goin' On
Release: 1971
Origin: US
Label: Epic
Genre: Funk
23. John Coltrane - Giant Steps
Release: 1960
Origin: US
Label: Atlantic
Genre: Jazz/Hard-bop
22. Oneohtrix Point Never - Returnal
Release: 2010
Origin: US
Label: Editions Mego
Genre: Ambient/Experimental
アメリカ合衆国・マサチューセッツ州出身アーティストDaniel Lopatinによるソロプロジェクトの4thアルバム。
彼は前名義"Chunk Person"でvaporwaveムーブメントの発端となる『Chunk Person's Eccojams Vol. 1』、傑作アンビエント作品『Returnal(本作)』『Replica』、実験性とポップ性の両面を押し進めた怪作『R Plus Seven』『Garden of Delete』『Age Of』『Magic Oneohtrix Point Never』、映画サウンドトラック『Good Time』『Uncut Gems』など、00年代中盤から今日にかけて、様々なタイプの傑作を立て続けにリリースしてきた。そのせいか、リスナーの間でも各作品の評価はかなり割れている印象を受ける。(そしてそれ故に、彼についての感想や批評を読むのはとても面白い。)
今回選出した本作は、彼にしては比較的ストレートなアンビエント路線の一枚。ノイズを巧みに重ねていく精密な空間演出能力と、皮肉めいた可愛らしいメロディーが重なり合い、オーロラのように煌びやかなサウンドスケープを映し出す。
21. THA BLUE HERB - SELL OUR SOUL
Release: 2002
Origin: Japan
Label: Tha Blue Herb Recordings
Genre: HIP-HOP/IDM
北海道札幌市豊平区・平岸出身の3人組一個小隊による2ndアルバム。BOSS THE MC曰く「心の内側を掘り下げた2枚目」。民族音楽/IDM/アンビエントなどを解体・再構築したかのような抽象性の高いトラックに、リスナーの脳へ直接テレパシーで語り続けるようなフローが重ねられた、TBHR史上最高にダークでアヴァンギャルド作品だ。リリック内で扱われているトピックは曲ごとで様々だが、それら全てに一貫したテーマは、「孤独に走り続ける上で伴う痛みとそれに抗わんとする信念」や「自問自答」について。歪極まりない音楽性や何重にも捻られた緻密な語彙選びとは裏腹に、表現されるメッセージは僕達が日々感じるそれと何ら変わらない。
疲れ果てた身体で天井を一人眺めている夜や、創作活動の最中、「何故俺は○○しているんだ?」という感情が自身の中で渦巻き始めた瞬間にこそ、本作に綴られた言葉は輝きを増すはずだ。
「俺の治療法は深く考えるってだけだ ここはよく来る心のあの世の果てさ」
(『I'M PRIVATE ARMY』より)
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