20. Keith Jarrett - The Köln Concert
Release: 1975
Origin: US
Label: ECM
Genre: Jazz/Free-Improvisation
19. Jacob Collier - Djesse, Vol. 1
Release: 2018
Origin: US
Label: Gedden/Decca/Hajanga
イギリス・ロンドン出身のソロミュージシャンによる2ndアルバムにして、コンセプト・アルバム「Djesse」シリーズ4部作の第1作目。類い希なるアカペラ・各楽器演奏技術を用いた、多重録音の繰り返しによって生まれた、底抜けのポジティブさと驚異的なまでの構築性を併せ持ったポップス・アルバムだ。ジャズ/ゴスペル/R&B/HIP-HOP/ネオソウルなどの境界を軽く飛び越えてしまう彼の前では、もはや「音楽ジャンル」という概念すら馬鹿馬鹿しくなってくる。
18. Berliner Philharmoniker, Herbert von Karajan - Schoenberg: Pelleas Und Melisande
Release: 1974
Origin: Austria
Label: Deutsche Grammophon
Genre: Classical
17. D'Angelo & Vanguard - Black Messiah
Release: 2014
Origin: US
Label: RCA
Genre: Neo-Soul/Funk-Rock
アメリカ合衆国・ヴァージニア州出身ソロミュージシャンの3rd。歴史的名盤2nd『Voodoo』から14年のブランクを経てリリースされた本作は、「人間は何故バンド演奏を行うのか?」という命題に、バックバンド「The Vanguard」とともに真っ向から斬り込んでいくかのような作品だ。
2nd『Voodoo』はヒップホップの無機的なリズム感とバンド演奏のヨレを共存させることによって、ブルース/ファンク/R&B/ヒップホップなどのブラックミュージックを統合して次のレベルに進めた歴史的名盤だった。本作はそのバンドサウンドをラフに崩し、バンド全体での緊張・脱力を丁寧にコントロールした作品だ。本作で聴ける極上の“バンドサウンド”は、彼等が長い期間を経て積み重ねた練習の賜物だろう。
16. Carolin Widmann & Dénes Várjon - Schumann: The Violin Sonatas
Release: 2008
Origin: German/Hungary
Label: ECM
Genre: Classical
15. The Jimi Hendrix Experience - Electric Ladyland
Release: 1968
Origin: US
Label: Reprise
Genre: Blues-Rock/Psychedelic-Rock
14. Son Lux - Tomorrows I
Release: 2020
Origin: US
Label: City Slang
Genre: Experimantal-Rock/Neo-Classical
13. Brian Eno - Ambient 1: Music for Airports
Release: 1978
Origin: UK
Label: E.G./Polydor/PVC
Genre: Ambient
12. Aphex Twin - Selected Ambient Works 85-92
Release: 1992
Origin: UK
Label: Apollo/R&S
Genre: Ambient/IDM
11. Leonard Bernstein, Wiener Philharmoniker - Mahler: Symphonie No.5
Release: 1988
Origin: Austria
Label: Deutsche Grammophon
Genre: Classical
10. The Beatles - The Beatles
Release: 1968
Origin: UK
Label: Apple
Genre: Pop-Rock
イギリス出身4人組ロックバンドの9th。バンドの実験精神がピークを迎えた時期に制作された2枚組の大作であり、「ホワイト・アルバム」という字名で音楽リスナーから長年愛され続けている。その一方で、一貫したコンセプトがまるで感じられないカオティックな内容であり、いつの時代も賛否両論がハッキリと分かれる永遠の問題作でもある。
本作の玉石混合ぶりはヒップホップのミックステープを聴いている感覚にも近く、「何処を素直に楽しみつつ、何処に意味合いを見出し、何処を蛇足な箇所と見なすか?」というような聴き方を全てのリスナーに対して迫ってくる。本作の前で人間は“批評”をせずにはいられない。その佇まいに僕は惹かれるのだ。
9. The Velvet Underground - The Velvet Underground & Nico
Release: 1967
Origin: US
Label: Verve
Genre: Pop-Rock/Experimental-Rock/Proto-Punk
8. Fennesz - Endless Summer
Release: 2001
Origin: Austria
Label: Mego
Genre: Ambient
オーストリア出身電子音楽家/ギタリストの4thアルバム。約19年前の作品であるが、今日においてもその音像の新鮮さは健在。
本作は彼のディスコグラフィーにおいて、坂本龍一との共作『cendre』『flumina』と並び、最もポップな作品と言ってもよいだろう。彼は初期から現在まで一貫して、微細なノイズを自在にコントロールした空間・風景描写の技術と、エモーショナルなメロディーセンスを研磨し続けているが、本作ではそれら二つの要素が奇跡的なまでに美しく絡み合っている。その音像はまるで本作のアートワークの写真のように、雄大な自然のゆらめきや大気の流れを“音”として体感しているかのよう。不思議なことに、ノイズまみれの音像なのに「人工物を聴かされている」という感覚がちっともしないのだ。
本作を再生する際は是非、静かな街や公園での散歩中や、夜明けの時間帯などに、目の前に拡がる景色を眺めながらどうぞ。これ聴きながら初日の出拝んだら絶対気持ち良さそう、明後日やってみようかな……。
7. François-Joël Thiollier - Debussy: Piano Works, Vol. 3
Release: 1997
Origin: France
Label: Naxos
Genre: Classical
6. Miles Davis - Kind of Blue
Release: 1959
Origin: US
Label: Columbia
Genre: Model-Jazz
5. The Beach Boys - Pet Sounds
Release: 1966
Origin: US
Label: Capitol
Genre: Pop-Rock/Chamber-Pop/Experimental-Rock
4. Hiroshi Yoshimura - Music For Nine Post Cards
Release: 1982
Origin: Japan
Label: Sound Process
Genre: Ambient/New-Age
3. Arvo Pärt - Alina
Release: 1999
Origin: Estonia
Label: ECM
Genre: Classical
2. Bill Evans - Waltz for Debby
Release: 1962
Origin: US
Label: Riverside
Genre: Jazz
1. Misery Signals - Of Malice And The Magnum Heart
Release: 2004
Origin: US
Label: Ferret
Genre: Metalcore/Post-Rock
アメリカ合衆国・ミルウォーキー州出身4人組バンドの1stアルバム。ロックという音楽の精神面・音楽面の衝動性とセンチメンタルなメロディーセンス……つまりは俗に言う「エモさ」で本作に匹敵するものは他に存在しないと考えている。現在彼等は叙情系ニュースクール・ハードコア/メタルコアというジャンルの領域のみで語られているが、その枠の内に留めておくにはあまりにも惜しい。本記事をご覧の方は全員、本作を今すぐにでも再生していただきたい。
本作の魅力はアルバム全体における、その類い稀なる緊張感のパッケージング能力。一触即発の初期衝動を敏腕プロデューサーが制御し、1stアルバムの魔法が全編において恐ろしく高いレベルで炸裂しているのだ。
本作制作当時は、前身バンド(7 Angels 7 Plaguesなど)のメンバーの事故死をキッカケに新バンド『Misery Signals』結成を行い、1st EP『Misery Signals』をリリースした直後であった。そのため、本作は音楽性・歌詞共に前身バンドおよび1st EPの延長にある。
アルバムイントロである1曲目『A Victim, A Target』と2曲目『In Response to Stars』を再生すればすぐさま分かるとおり、彼等の音楽性のベースとなっているのは、複雑なリズムワークと過剰に入り組んだ曲構成をなすカオティックなハードコア/メタルコアだ。90年代後半〜00年代前半は同ジャンルの音楽シーンにおいて、高い演奏技術と幅広い音楽素養を有した魅力的なバンドが各所で次々と現れた豊穣の時代であり、彼等もそれらの映えある一員といえるだろう。
しかし、同ジャンルのシーン内でも彼等は唯一無二の存在であった。当時は殺人的な不協和音と変拍子でリスナーを圧倒するバンド、静と動を対比させることで壮大なドラマを描くバンド、音響面の実験に傾倒するバンド、あらゆる音楽のエッセンスを無節操に取り入れるバンドなど、様々なスタイルのバンドが存在していたが、高い演奏技術を活かしたソリッドな攻撃性と有機的なメロディーを多層的に織り交ぜる技量においては彼等が群を抜いていた。
前身バンドや1st EPの時点ではユニークなアイディアを曲内で整理し切れておらず、若干暴走気味な印象であったのだが、本作ではメタル界の名ソロアーティスト/プロデューサーDevin Townsendの協力のおかげで、彼等のスタイルは一気に洗練を見せた。つまり、本作は新バンドの鮮烈なエネルギーを秘めた1stアルバムであると同時に、以前までのキャリアの集大成にもなっているのだ。
本作の収録曲はどれも取り止めがなく、聴く者を特定の感情に浸らせる前に次々と姿を変えてしまう。眩いメロディーを紡ぐリードギターが涙を誘ったかと思えば、Jesse Zaraskaのスクリームと連打されるバスドラムがそれを掻き消し、胃にもたれるようなブレイクダウン・ビートダウンの直後、スイッチが切り替わったようにツービートで疾走し、突如ポストロック/エモ系の柔らかな音の響きが辺り一面に拡がる。その様はまるで、喜怒哀楽が入り混じりやりきれなくなった感情の渦を、そのまま具現化したかのよう。バンドの多層的な音楽性が、そのまま感情描写能力の深さへと還元されているのだ。10代の頃、このアルバムを聴いて何度目が潤んでしまったことか……。
本作リリース以降の彼等は、メタル方面により接近することでサウンドの安定感を向上させ、クリーンボーカルや音響的なアプローチ、ストリングスの導入などにより表現の幅をさらに拡げていく。しかしそれと引き換えに、初期の彼等を包んでいた空中分解寸前の緊張感も徐々に失ってしまう。やはり、初期衝動の魔法はいつまでも続かないものであるし、だからこそ尊いものなのだ。『Of Malice & The Magnum Heart』を再生するたび、それを実感させられる。
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