60.Autechre - Untilted
Release:2005/UK/Warp
Genre:Electronica/IDM
Spotify:(なし)
IDMシーンの中核を担う2人組ユニットによる8th。彼等の全盛期は間違いなく『EP7』〜『Draft 7.30』の期間であり、楽曲のインパクトではそれらには劣ってしまうと感じる。しかし、円熟期に入っても彼等の進化はまだまだ止まらない。彼等の代名詞である不条理ビートの隙間に“ゆとり”が生まれており、独特のねじれ感を失わないまま非常に聴きやすい音像となっているのだ。
Autechreの作品はどれも名盤揃いだが、聴き通した回数では本作がダントツ。これも、アルバム全体の風通しが良いおかげだ。彼等の入門編に適しているのは当然『EP7』『Confield』の二作だが、そちらがお気に召したようなら本作もどうぞ。
59.Joy Division - Closer
https://itunes.apple.com/jp/album/closer-remastered/544364714?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:1980/UK/Factory
Genre:Post-Punk/Gothic-Rock
ポスト・パンク/ニューウェーヴ/ゴシック・ロック・シーンにおける永遠の名盤であり、
カリスマ的フロントマンIan Curtisの遺作。
「芸術は技術ではなくセンス」という言葉は誰もが冗談交じりで口にするが、それを最も体現しているアルバムが本作だろう。
パシパシポコポコと軽い音を鳴らすドラムと高音ベースが生み出す、不安定なミニマル・ビート。ガシャガシャと掻き鳴らされるノイジーなギター。ドン底のメロディーを奏でるチープなエレクトロニクス、そして内省的な歌詞を吐き出すIan Curtisのヘタウマ低音ボーカル。これらが集合したポンコツ過ぎるバンド・アンサンブルは、まるで“重み”も“肉体性”もありゃしない。しかし、この独特な演奏感が彼等のネガティヴな世界観とベストマッチ。まるで「幽霊が楽器を演奏して儀式を行なっている」かのような暗黒オーラを放っている。
特に本作の後半、段々と演奏から電子音楽へと比重が傾いていく楽曲の流れは“肉体が朽ちて精神のみが解き放たれる”ような感覚すら味わえる。以前、目を閉じながら本作の後半を聴き流した時は本当に精神がどうかしてしまうかと思った。恐ろしい…。
一般的には1st『Unknown Pleasures』が彼等の代表作とされているが、私からは本作を推薦しよう。
58.Tigran Hamasyan Trio - Mockroot
Release:2014/Armenia/Verve
Genre:Nu-Jazz
現代ジャズ・シーンを牽引するアルメニア出身ピアニストの5th。今作はTigran Hamasyan(Pf.)・Sam Minaie(Ba.)・Arthur Hnatek(Dr.)のトリオ編成。
各パートが一糸乱れぬユニゾンプレイを見せる攻撃的作品から、宗教音楽やアンビエント要素を取り入れた静謐なECM作品まで、幅広い音楽性を持つ彼であるが、今作ではリズムのヒネりとグルーヴをひたすら追求。
彼の代名詞である「Meshuggah的リズムアプローチをピアノジャズとして独自解釈した、ミニマルなフレーズを反復しながらも徐々にズレていく“精密機械的ピアノプレイ”」が本作では全編で大活躍。痙攣するかのような変則リズムに脳細胞を刺激されっぱなしだ。所々でアクセントとして加えられる民族音楽的なスキャットと煌びやかなシンセも、良い味を出している。
彼の音楽は即興的要素が薄いため、硬派なジャズファンからしてみれば「ジャズ」という枠に括るのは些か不適切かも知れない。僕としても、本作はひとつのジャンルの中で語られるべきでは無いと考えている。ピアノ・ベース・ドラムが一体となり、硬く重いリフを次々と生み出し、観客席にこれでもかと叩きつける…。そう、現代において、世界で最も「ロック」なピアニストは間違い無く彼であるからだ。
57.Rainbow - Rising
https://itunes.apple.com/jp/album/rising-deluxe-edition/421212860?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:1976/UK/Oyster/Polydor
Genre:Hard-Rock
56.Sleep - Dopesmoker
Release:2003/US/Tee Pee
Genre:Stoner-Rock
ドゥーム・メタル/ストーナー・ロック界の伝説的名盤。収録内容はなんと1曲63分間、それも鳴らされるのはブルージーで分厚いバンドサウンドのみ!ある意味「“ロック”というジャンルの限界」に挑戦している作品だ。
本作の音楽性は一見すると馬鹿げた試みとしか思えないのだが、実際に聴けばこれが単なる“お遊び”ではないことがすぐに分かるはず。冗長さなど全く感じさせないほど、全ての瞬間が緻密に構築されているのだ。無茶苦茶なテーマの割に恐ろしいほど聴きやすく、ミニマル感もたっぷりなもんだから、「本作は1種類のリフのみで構成されている」 という偽の噂が出回るのも無理はないか……。これにはSteve ReichやTerry Rileyもビックリだろう。
ちなみに、あまりに非商業的な内容のためにレーベルから反発を受け、一度短縮版をリリースする羽目になったという逸話もある。そういったエピソードも含めて、本作はとにかく他に類を見ない要素ばかりで面白い。全員必聴。とりあえず、最初の10分間だけでも。
Release:1998/US/Thrill Jockey
Genre:Post-Rock
Spotify:(なし)
シカゴ音響派/ポストロックのド定番。彼等が「クラウト・ロック系とフュージョンのフォロワー」から「ポストロック」へと進化したのは間違いなく本作から。John McEntire関連のバンドはそれなりに聴いたが、一枚選ぶとしたら問答無用で本作だろう。
54.Miles Davis - Get UP with It
Release:1974/US/Columbia
Genre:Fusion
『Bitches Brew』に並ぶ、電化マイルスの最高傑作。2枚組・全120分間に及ぶ、彼の音楽探求が生み出した巨大な結晶体だ。1970年・1972年・1973年・1974年に録音された8曲を収録した、謂わば“寄せ集め”的成り立ちをしたアルバムなのだが、音からは全く散漫な印象など受けない。音楽性も物凄い。ジャズはもちろん、クラシック、ロック、ファンク、アフリカ音楽など、あらゆる音楽ジャンルを飲み込んだココでしか聴けない曲がズラリ。本作でのマイルスはトランペットだけではなくオルガンも駆使し、サウンドをより重厚に仕立て上げている。
悲しい哉、今の僕の腕では、本作の音楽性を細かく分析して言語化するなんてとても不可能。何度聴いても底の見えない、マイルスの美学をこれでもかと詰め込んだ濃密なアルバム。
53.Between The Buried And Me – The Great Misdirect
https://itunes.apple.com/jp/album/the-great-misdirect/1264050051?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:2010/US/Metal Blade
Genre:Progressive-Metal/Avant-garde-Metal
自称「アダルト・コンテンポラリー・プログレッシヴ・デスメタル」バンドの5th。古今東西の音楽を繋ぎ合わせた究極のコラージュ・アート。さながら進化してゆく音楽史をそのまま見せられるような摩訶不思議な体験を味わえる作品だ。
彼等の音楽の基礎となるのは、矢継ぎ早にメロディックなフレーズを紡いでいくテクニカルなデスメタル。そこにエモ、サイケ、民族音楽、ジャズ/フュージョン、ラテン、ブルース、ブルーグラス等、無数の音楽要素を織り交ぜて、ひとつのジャンルではとても括れないカラフルな楽曲を作り出す。あらゆる既存の音楽手法をコピーし再構築するという意味では、ヒップホップの「サンプリング」的な発想とも言えるだろうか。ここまでジャンルレスに振り切れたアーティストは、ロック全体を見渡してもなかなか存在しないだろう。
本作ではエピックなメタル、民族音楽、ブルース的な手法が特に多く取り入れられており、彼等にしては少々“土着的で泥臭い”雰囲気だ。そして相変わらず、楽曲の構築度は他に類を見ないほどの高さ。4th『Colors』〜6th『The Parallax II: Future Sequence』の3作品はどれも違った方向性で彼等の美学を極めた作品なので、どれを最高傑作とするかは個人の好みによるだろう。
ひとつのジャンルに縛られない、型破りな大作がお好きな方は是非。
52.Meshuggah - The Violent Sleep of Reason
https://itunes.apple.com/jp/album/the-violent-sleep-of-reason/1153948193?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:2016/Sweden/Nuclear Blast
Genre:Progressive-Metal/Djent
“Djent”の父にして・スウェーデンを代表する5人組エクストリームメタル・バンドによる8th。
彼等のアイデンティティとなっているのは言わずもがな、その変則的なリズム。彼等のフォロワー的バンドは無限に存在するものの、「恐ろしく緻密であるのにも関わらず、“終始4/4拍子”」という、彼等独自の作曲法まで盗むことが出来たアーティストはほんの一握り。彼等の音楽性は年々深化しているのだが、彼等が自らに課した「4/4拍子ルール」が破られることは決して無いため、オーディエンスも理解不能に陥ることはないのだ。
本作はフュージョンやアンビエント的な空間演出要素も、スラッシュメタル由来の疾走感も全て排し、変則リズムの構築に特化。全曲ミドルテンポで鋼鉄の螺旋を描き続ける、彼等史上最高峰にストイックなアルバムだ。彼等の入門編には6th『obZen』7th『Koloss』の方が適しているが、終始ミドルテンポでもダレずに聴ける自信があるのであれば、本作から聴き始めるのも悪くないだろう。変則リズムの極致を味わいたい方は是非。
51.Steve Reich - Music for 18 Musicians
https://itunes.apple.com/jp/album/music-for-18-musicians/161171945?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:1978/US/ECM
Genre:Minimal
50.Duke Ellington - Money Jungle
Release:1963/US/United Artists
Genre:Post-Bop
49.高柳昌行 - Mass Hysterism
Release:2006/Japan/JINYA DISC
Genre:Free-Jazz
Spotify:(なし)
日本フリージャズ界における孤高のギタリスト、高柳昌行が率いる「ニュー・ディレクション・ユニット」による、1983年8月14日/明大前・キッド・アイラック・ホールにて録音されたライブテイク。メンバーは高柳昌行(Gt.)・飯島晃(Gt.)・山崎弘(Dr.)の3人。
ノイズまみれのツインギターと荒れ狂うドラムが生み出すのは、分厚い轟音の壁。メロディーも曲展開も計算もなにもあったもんじゃない、どこまでも破壊的な音楽だ。正直言って僕も全く理解出来ていないのだが、訳の分からないままこの音に浸り込んでしまっている。今の僕にとって、この世で最も“ブルータル”な音楽は本作だ。
48.Black Sabbath - Black Sabbath
Release:1970/UK/Vertigo
Genre:Hard-Rock/Doom-Metal
説明不要。Black Sabbathの個人的最高傑作はコレ一択。
47.King Crimson - Red
Release:1974/UK/Island
Genre:Progressive-Rock
Apple Music: (なし)
Spotify: (なし)
46.A Tribe Called Quest - The Low And Theory
Release:1991/US/Jive
Genre:HIP-HOP
45.The Beach Boys - Pet Sounds
https://itunes.apple.com/jp/album/pet-sounds/999674646?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:1966/US/Capitol
Genre:Classic-Rock
44.Anathema - Distant Satellites
https://itunes.apple.com/jp/album/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%88-%E3%82%B5%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%84/880704968?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:2014/UK/Kscope
Genre:Post-Progressive-Rock
アングラ耽美主義のゴシックメタルからまさかの路線変更。ハリウッド級の超壮大シンフォニック・バラードを詰め込んだ、普遍的ポップネスの溢れるポスト・プログレッシヴ・ロックの大名盤だ。
彼等の音楽性は基本的に、ある程度パターン化している。プログレ的な上品さを携えた“静”パートと、壮大なシンフォニーが鳴り響く“動”パートの対比による、ダイナミズムの演出だ。ギター・ベース・ドラムが軽やかに刻む奇数拍子の上で、男女ツインボーカルが伸びやかな歌声を披露し、クライマックスでは神々しいピアノとストリングスの音色が乱舞する。毎度お決まりの展開と分かっていても、この叙情メロディーの大洪水は涙無しに聴くことは出来ないのだ。
また、本作では叙情バラードのみならず、後半でバンドサウンドを封印したトリップホップ/アンビエント的なアプローチにも挑戦。ここは賛否両論分かれる部分ではあるが、僕は素敵なアルバムの締め括り方であるように思う。
8th『We're Here Because We're Here』以降から今に至るまでの彼等は、まさに“第2の全盛期”のド真ん中。壮大な音楽がお好きな方は、是非この機会に一枚だけでもいかがだろうか?
43.Radiohead - OK Computer
Release:1997/UK/EMI
Genre:Alternative-Rock
説明不要。僕がRadioheadの最高傑作を選ぶのなら、間違いなく本作一択。ちなみに、2位が『KID A』で3位が『A Moon Shaped Pool』。
42.American Football - American Football
Release:1999/US/Polyvinyl
Genre:Emo/Post-Rock
90年代エモ/ポストロック・シーンのスター、キンセラ兄弟率いるバンドによる1st。
変拍子を優しく捌いていくリズム隊を土台に、肩の力の抜けた歌声とツインギターの美しいアルペジオの絡みをひたすら聴かせるアルバムだ。また、トランペットが数曲で使用されていたりもして、なかなか洒落ている。ヴァース/コーラスの概念を強く意識させない曲構成であるものの、どの瞬間も美しいギターメロディーが絶えないおかげで、とても浸り込みやすい。曲間の切れ目(最後の曲→1曲目も含め)を全く感じさせない、淡々と繋がっていくアルバム構成も見事なもの。一時期の僕は本作を毎日2〜3周流していたこともあるくらいだ。
90年代エモ/ポストロック系ファンから長きに渡って愛され続けている作品であるが、それに加えて「何とは無しにロック周辺の音楽をボーッと聴き流したい」という悩みがおありの方へも強く推薦したい。
41.Converge - Jane Doe
Release:2001/US/Equal Vision
Genre:Metalic-Hardcore/Mathcore
『The Dillinger Escape Plan - Calculating Infinity』『Botch - We Are the Romans』に並ぶ、カオティック・ハードコアの象徴的作品。ハードコア・パンクに高いテクニック・実験性・コンセプトアルバム的な構築性を持ち込んだ、革新的な一枚だ。