100.Arctic Monkeys - Whatever People Say I Am, That's What I'm Not
Release:2006/UK/Domino
Genre:Garage-Rock/Indie-Rock
2006年の夏にイングランドから彗星の如く現れた超大型新人による、名刺代わりの1stだ。メタルともパンクとも違うソリッドなギターリフ、軽快に吐き捨てられる等身大の歌詞、そして00年代初頭に巻き起こったガレージロック・リバイバルの流れを汲む仄かなブルースの薫り。それがこのアルバムの全て。まさにシンプル・イズ・ベスト。2nd以降、プログレッシヴなリズム感やクラシックロックの渋味を吸収し、幅広い音楽性をシーンに見せ続けるが、やはり今作が一番衝撃的な作品だろう。
ストイックにギターを聴かせるこの「マイナスの美学の結晶」は、『Radiohead - OK Computer』『Rage Against The Machine - Rage Against The Machine』『Arcade Fire - Funeral』『Wilco - Yankee Hotel Foxtrot』等と共に、メタル一辺倒だった頃の僕を大きく変えてくれた。
今の僕にとっても一番思い入れの深いUKロック・アルバム。
99.SikTh - Death of a Dead Day
Release:2006/UK/Bieler Bros.
Genre:Progressive-Metal/Mathcore
UKが誇る6人組変態カオティック・ハードコア集団の2nd。
Djentをはじめとする、近年のプログレッシヴ/テクニカル系メタルに多大なる影響を与えた記念碑的作品だ。
演奏隊が不規則にストップ&ゴーを繰り返しながらグネグネとしたグルーヴを生み出し、高い歌唱力を持つJustinと多重人格的なスクリームを駆使するMikeeが音の隙間を埋め尽くすかの如く叫ぶ、がなる、そして歌う!
これは一見取り留めの無い音にも思えるが、どの瞬間も遊び心溢れるギミックがあちこちに仕掛けられているので、不思議なほどサラリと聴けてしまう。
特にモダンヘヴィネス・正統派メタル・ジャズ・フュージョン・プログレ等、幅広いバックグラウンドを感じさせる多層的なギターワークに耳を傾けているだけでも十分楽しめるし、ボーカル二人の掛け合いも凶暴なだけではなくメロウな一面もしっかり備えている。おかげで、強烈な音楽性ながらどこか愉快な雰囲気だ。
私個人としては本作に一番思い入れがあるのだが、音楽性の振れ幅では1st『The Trees Are Dead & Dried Out Wait for Something Wild』の方が断然上であるし、やはり初期2作は甲乙付けがたい。バンドの復活作となるEP『Opacities』と3rd『The Future in Whose Eyes?』も攻撃性ではやや劣るものの、”静”の演出において新境地を見せた傑作となっている。どの作品も間違いなく一級品の完成度だ。
類い希なるテクニックとポップ性のぶつかり合う、彼等独自の奇妙なバランス感覚はやはり多くの音楽ファンの心を惹くようで、現在においても直接的フォロワーは増え続けている。リリースされた2006年からずっと、本作は“最先端”なのだ!
98.L'Arc~en~Ciel - REAL
Release:2000/Japan/Ki/oon
Genre:Alternative-Rock/J-POP
Apple Music: (なし)
Spotify: (なし)
90~00年代にかけて日本のロック/ポップスシーンを牽引し続けた国民的ロックバンドの7th。
ハイペースのシングル連続リリース・アルバム『ark/ray』2枚同時リリース等の反動から、「バンドの長所を濃縮する」という意識の下に制作された本作は、彼等のディスコグラフィでも一番「各メンバーのバトル」に焦点が当てられた仕上がりだ。「当時のバンド内に張り詰めていた緊張感をそのまま音へと昇華した」というのは考えすぎだろうか。
甘い浮遊感を帯びたメロディと、バンドサウンドを彩るエレクトロニクス、hydeの優しげな歌声が絡み合う様子からは、彼等の核は変わらず「ニューウェーヴ」であることが伺える。
しかし、強靭なうねりで主張するベース、パチリパチリと刺々しい音を連打するドラム、ザラついたリフを掻き鳴らすギターを聴けば、いつもの姿とのギャップに驚くはずだ。
彼等がここまで激しく火花を散らした瞬間は、後にも先にも無いだろう。 これは「メタル」や「ハードコア」、ましてや「プログレ」などとも違う、90年代以降の「オルタナティヴ」な重さ。音楽性の全く異なる4人が集まり、今にでも崩れ落ちそうなバランス感覚でポップソングを鳴らす、精神的な意味での重さだ。
そう、このアルバムはJ-POPシーンのトップに君臨しているにも関わらず、80年代のイギリスと90年代のアメリカの空気感を味わうことの出来る、他に二つと無い特性を持つ作品なのである。特に、本作のハイライトとなる6曲目『finale』は当時の音楽性をよく現した名曲なので是非。退廃的なゴシックロック調を軸にしつつ、メタリックなエッセンスを交えながらより深く深く沈んでゆく、彼等にしか作り得ないバラードナンバー。
97.lynch. – XIII
Release:2018/Japan/KING
Genre:V-ROCK/Metalcore
「ヴィジュアル系×ラウドロック」を掲げる者は数あれど、彼等ほどその双方の“様式美”を深く理解し、融合させることに長けたバンドは他に存在しないだろう。
モダンヘヴィネス/UKロックの方法論を対比させてゆくツインギター・玲央と悠介、鋭いフォールスコードスクリームと妖艶な中~低音域のクリーンボイスを操る葉月が核となって鳴らす、「90年代と10年代を繋ぐロックサウンド」はありそうで他に無い。本作では一切の贅肉を削ぎ落としたことでキャッチー性は薄れてしまったものの、それと引き換えに、より深みのあるメロディと空間表現を手にした。
その音楽性の深化がより顕著に現れているのは、本作のラストナンバー『A FOOL』だろう。彼等の普遍の美学である「ツインギターの対比」が磨き上げられた末に辿り着いた境地。大地を揺るがすような轟音7弦ギターリフと、天に瞬くようなディレイがかったクリーントーン・ギターのメロディ、それらが溶け合って紡ぎ出される幻想世界に、誰も触れることは出来ない……
96.Tool – 10,000 Days
Release:2006/US/Volcano Entertainment
Genre: Progressive-Rock/Alternative-Rock
Apple Music:(なし)
Spotify:(なし)
90年代後半に突如として現われた次世代型プログレッシヴ/オルタナティヴ・ロックバンドの4th。
80年代King Crimsonやグランジの血を感じさせるザラついた奇数拍子の刻みに、民族的・呪術的なメロディが絡み合い、妖しくも美しい世界観を描き出す…。90年代後期以降のロックシーンにおいて、彼等は「孤高」という言葉が最も似合うバンドのひとつだろう。
本作は彼等のディスコグラフィでも最もくぐもった色合いに仕上げられた一枚。前作『Lateralus』までは複雑ながら口ずさめるようなメロディーも多く、スタジアム級バンドらしいシンプルなビートを鳴らすパートも用意されていたのだが、今回はリズムとアトモスフィアが主軸。一聴では解読不能の変則リズムに、大地に鉄塊でも叩きつけるかのようなリズム隊の重厚なグルーヴ、クリーン /エレキを切り替えながら不気味なメロディを紡ぎ出すギター、そしてMaynard James Keenan(Vo.)の微細な感情の揺れ動きを形にするパフォーマンスにはやはり圧倒される。確かにサウンドは更にダークな路線へと進んでいるが、体感的に楽しめる要素の多い本作は、決して「難解」なモノではないハズ。
彼等の新作リリースはいつになることやら……。
95.Katatonia – The Fall of Hearts
(本作をストリーミング音質で視聴するのは非推奨)
(本作をストリーミング音質で視聴するのは非推奨)
Release:2016/Sweden/Peaceville
Genre: Progressive-Metal/Gothic-Metal
原初のゴシックメタル・シーンから、美しきアトモスフィア(雰囲気)を追い求め、ジャンルの境界を超えたプログレッシヴの路へ。独自の歩みを続けるスウェーデン出身5人組バンドの10th。
今作では70年代プログレの要素を色濃くフィーチャー。しかし、こうした「北欧メタル×70年代ロック」という手法自体はOpeth・Enslaved・Edge of Sanity・Barren Earth・In Vain・In Morningなど、数多のバンドが試みてきたものであるし、新鮮味は薄いだろう。
しかし、彼等はその路線において一つの完成系を示すことが出来た。「アトモスフィアに重きを置いている」という彼等自身の言葉通り、とにかく「音の響き」が美しいのだ。
本作の主人公であるギターとボーカルにまとわりつくように、低音部を優しく塗り潰していくベース、モダンなアンビエント/レトロなメロトロン/優雅なピアノを使い分けるキーボード、それらの裏で軽快にリズムを刻むドラムとパーカッションが鳴り響く。楽曲自体も完成度は当然高いのだが、それ以上に“演奏風景が目の前に現れる”ほど立体感あるサウンド・プロダクションが衝撃的。本作は「Katatoniaの最高傑作」というだけではなく、天才サウンドエンジニアJens Bogrenのキャリア史上でもトップクラスの作品だろう。
プログレファンはもちろん、ポストロック/音響派を聴き漁るような「音響マニア」の方々も是非。
94.The Band - Music From Big Pink
http://itunes.apple.com/jp/album/music-from-big-pink/840589876?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:1968/Canada/Capitol
Genre:Classic-Rock/Roots-Rock
ご存知、60年代ロックを代表する歴史的名盤のひとつ。クラシックロック全般に疎い僕が本作をわざわざ語る意味は無いだろうが、やはりいつ聴いても痺れる。
メロディーはポップでありながら、演奏自体は物凄くモタれるようなグルーヴ感に溢れている。このアルバム全体が「優しい重さ」に包み込まれているのだ。もしタイムマシンで60年代へ行けたとしたら、僕は必ず彼等のライブを観に行くだろうな。
93.Mark Guiliana Jazz Quartet - Jersey
Release:2017/US/Motema Music
Genre:Nu-Jazz
現代ジャズ・R&B・電子音楽・ポップス界の最前線をひた走るカリスマ・ドラマー、Mark Guiliana率いる4人組ジャズバンドの2nd。彼がしばしば口にする『Beat Music』という言葉通り、タイトなバスドラムを軸としたパワフル過ぎるプレイスタイルは本作でも健在。彼の生み出す人間離れしたビートは、現代ジャズ周辺シーンはもちろん、プログレッシヴロック・ポストロック・ヘヴィメタル等、あらゆる層の“技巧派音楽ファン”にとって斬新に映ること間違い無し。
本作でも主人公はやはりMark Guiliana。己の身一つで、変則ビートの“空間”を創り出してしまう。
そこにバンドメンバーであるJason Rigby(T.Sax)、Fabian Almazan(Piano)、Chris Morrissey(Ba.)が素朴に、それでいて趣深く“色彩”を与えていく。お陰で、ガワは「ジャズ」であるものの、本質的には変態的という、独特の雰囲気が生まれているのだ。
彼の本領発揮は、IDM・ヒップホップ等の影響を直接的にアウトプットした『Beat Music』『My Life Starts Now』『Mehliana: Taming the Dragon』等の作品群であるだろうが、私としては贅肉を削ぎ落とし切った本作が一番のフェイバリット。彼の入門編としても強く推薦しよう。
92.Textures - Phenotype
https://itunes.apple.com/jp/album/phenotype/1068180303?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:2016/Netherlands/Nuclear Blast
Genre:Progressive-Metal/Djent
「Djent」という単語が生まれる以前よりMeshuggahの美学を追い求め続けた、謂わば“Prot-Djent”的バンドの5thにしてラストアルバム。
1曲目『Oceans Collide』のイントロを一度耳にすれば、彼等が浅はかな音圧・技巧至上主義者などとは数段格の違う、変則リズムの飽くなき探求者であることは明白だろう。
説明不要のMeshuggah直系リズム、筋肉質なハードコア/メタルコア、優雅なフュージョン等を咀嚼した、緻密さと豪快さを併せ持つバンドアンサンブルはまさに達人技。その轟音の隙間に散りばめられたピアノの音色やアンビエント要素も、世界観をより強固なものとする絶妙なスパイスだ。そして、獣じみた太いグロウル/クリーンボーカルが武器のDaniël de Jongh(Vo.)も相当な実力者。卓越したミュージシャンである彼等6人が鳴らすサウンドからは満ち溢れている、結成15年目に制作されたとは到底思えない“圧倒的貫禄”が…!
本来、今作は続編となる『Genotype』が制作され、2枚組コンセプトアルバムになる構想であったが、悲しい哉バンドの解散によりそれも叶わぬ夢に。彼等の復活を強く願うばかりだ……。
91.Jan Jelibek - Looping-finding-jazz-records
Release:2002/German/faitiche
Genre:Click-House
アルバム名通り、60年代〜70年代のジャズのレコードから掻き集めた無数のサンプリングで構築された、クリックハウスの金字塔的作品。
基本的にはマイナスの美学を追求するミニマル志向の電子音楽なのだが、僅かにズレたリズムや微細なノイズ等の使い方が実に巧みで、まるで生きているかのような躍動感に溢れている。僕は恥ずかしながら電子音楽全般を語れるほどは詳しくないのだが、今まで聴いたそういった系統の音楽の中で最も「暖かい」と感じさせられたアルバムだ。
聴く者もTPOも一切選ばない、良い意味でスッと耳に入ってくる音楽なので、本稿をお読みの方は今すぐに本作を再生していただきたいな。
90.Squarepusher - Music Is Rotted One Note
Release:1998/UK/Warp
Genre:Drill 'n' bass
「ドリルンベース」の始祖として知られる天才電子音楽コンポーザー/ベーシストが過渡期に発表した問題作。
ベース・ドラム・キーボードを全て自らの手で即興演奏・ミックスして作り上げた、謂わば「ぼっち亜空間ピアノジャズ/フュージョン」アルバム。彼の代名詞であるドリルンベースはおろか、電子音楽要素自体が「演奏の味付け」程度のレベルにまで抑えられており、リリース当時は賛否両論の大きく分かれる作品となった。
本作の音楽性は各所で「抽象的」と評されているが、プログレ・ポストロック畑出身の僕からしてみれば「言うほど輪郭の掴み難い作品か?」と思ったりもする。(確かに過去作品に比べれば、劇的な音楽性の変化ではあるが)
また、本作をお聴きの際は、下記のSquarepusher本人によるインタビュー記事は必見。制作に使用した機材や経緯等が詳しく語られているため、読むだけでも作品の全貌がとても掴み易くなるハズだ。
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/SonyTechno/feature/9809/squarepusher/interview.html
89.Pain of Salvation - In the Passing Light of Day
Release:/Sweden/InsideOut
Genre:Progressive-Metal
Daniel Gildenlöw(Gt.&Vo.)率いる、文学・哲学派プログレッシヴ・メタル・バンドの9th。5thから脱プログレメタルを試み、民族音楽・ミクスチャー・70年代ハードロック・70年代プログレ等、様々な音楽探求を繰り返していたのだが、ここに来てまさかの原点回帰。「メタル」という枠に留めておくにはとても惜しい、美意識の高い退廃的な世界観を描き出す名盤。本作の評価は各所で「まぁまぁ良い」といった程度の反応だが、個人的には最高傑作だ。
88.Godspeed You! Black Emperor - Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven
Release:2000/Canada/Kranky
Genre:Post-Rock
「轟音系ポストロック」と言えば最初にその名が挙がる、カナダの代表的なインスト・ロックバンドの2nd。
トリプルギター・ダブルベース・ダブルドラム・バイオリン・映像技術者の計9人で、抽象的な音像を描き続ける。
87.Rage Against The Machine - Rage Against The Machine
Release:1992/US/Epic
Genre:Alternative-Rock/Rap-Rock
86.Arti & Mestieri - Tilt
Release:1974/Itary/Cramps
Genre:Progressive-Rock/Jazz-Rock
イタリアン・プログレッシヴ・ロックの代表的名盤。超絶ドラマーFurio Kirikoのプレイは必聴。
85.Meshell Ndegeocello - Comfort Woman
Release:2003/US/Maverick
Genre:Alternative-R&B/Neo-Soul
84.Animals As Leaders – Animals As Leaders
Release:2009/US/Sumerian
Genre:Progressive-Metal/Djent
黒人系8弦ギタリストTosin Abasi率いるインスト系メタルバンドのデビュー作。
ギター主体のインストを出発点としていながらも、ロックの外へと共振する要素をも吸収した興味深い作品だ。
まず、Tosin Abasiのギターに注目。『Awake』期のDream TheaterやMeshuggahからの影響を窺わせる変則重低音リフを軸に、ジャズギタリストを思わせる水々しいクリーントーン、優雅にキメるフュージョンチックな高速ソロ、Allan Holdsworthを彷彿とさせる妖しいメロディー等を練り込みながら、グイグイと楽曲を進めていく。高いテクニックと幅広い音楽素養をそのまま武器にした彼のプレイは、ギター未経験者にとっても“分かりやすい凄さ”に溢れている。そして更に、Misha Mansoor(Gt.以外のプログラミング)が楽曲のアクセントに様々な電子音楽要素を注入。2人のみで作り上げられたとはとても信じられない、深い奥行きを持った世界観だ。
全メタル・プログレファンはもちろんのこと、Squarepusherやマスロック系バンドのファン、Jazz The New Chapter読者などにも強く推薦したい。
83.Chick Corea - Return To Forever
https://itunes.apple.com/jp/album/return-to-forever/840537162?at=10l8JW&ct=hatenablog
Release:1972/US/ECM
Genre:Fusion
82.diSEMBOWELMENT - Transcendence into The Peripheral
(コンピレーション盤)
Release:1993/Australia/Relapse
Genre:Death/Doom-Metal
Spotify:(なし)
オセアニアのアンダーグラウンド・メタル・シーンが誇る他に類を見ぬ怪作。
「フューネラル・ドゥーム」というジャンルが生まれる礎となった程、後のシーンに多大な影響を与えたカルト・マスターピースだ。
デスメタルというジャンルは「物理的な“激しさ”を追い求める音楽」というイメージを持たれがちだが、実は「アトモスフィア」も非常に重んじる音楽だ。Morbid AngelやAutopsy、Obituary等、初期デスメタル・シーンを見渡せばそれは容易に理解出来るだろう。そして本作は、そういったバンド達が鳴らしていた“暗黒ドロドロ路線”の極めつけ。
音数を極端に絞ったスローパート、宗教的なスキャットとギターフレーズ、唐突な爆走パート、これらを組み合わせて一つの大曲を構築していく。籠もったB級臭い音質も相まって、妙に生々しい暗黒性を持っている。再生することすら恐ろしい…。
エクストリーム・メタルの延長でありながら完全に「遅効性」の音楽性なので、完成度の高い名盤とは言え、やはり聴く者をどうしても選ぶ。オカルト/ホラー的な雰囲気の音楽がお好きな方は是非。
81.The Dillinger Escape Plan - Calculating Infinity
Release:1999/US/Relapse
Genre:Mathcore
「マスコア(数学的ハードコア)」という音楽を世界に知らしめた1枚。
本作を再生した瞬間に押し寄せるのは完璧に計算され尽くした変拍子・不協和音・ピロピロと鳴らされるジャジーなギター・ブラストビート・絶叫の嵐。全11曲・37分27秒を怒涛のテンションで走り切る。
活動期間中唯一の固定メンバーであるBen Weinman(Gt.)が「普段ヘヴィな音楽は聴かない(https://gekirock.com/interview/2010/03/the_dillinger_escape_plan_2.php)」「テクニカル志向のバンドとハードコアパンク系バンドの2つが合体して結成された(https://liveage.today/dillinger-escape-plan-interview/3/)」「Naked Cityから影響を受けた」と語る通り、彼等が鳴らす音は「フリー/アヴァンギャルドジャズとハードコア/グラインドコアのミクスチャー」。精密機械が火花を散らしながら暴走するかのような世界観はいつ聴いても衝撃的であるし、初めて本作を聴いた時はあまりの情報量に思わず吹き出してしまったことを覚えている。
次作以降の彼等はジャズやインダストリアルの要素をより強めたユニークな路線へと向かうが、鬼気迫る攻撃性ではこの本作が一番だろう。
また、初めて彼等のお聴きになる際は下記のライブ映像も観るべし。彼等が実験的な音楽性でありながら「ハードコア」と呼ばれる所以は、これを目にすれば分かるだろう。