カヤマのブログ

カヤマ・音楽アルバム100選(ver.2.0)【20位〜1位】

20.Bring Me The Horizon - amo

amo

amo

  • Bring Me The Horizon
  • ロック
  • ¥1630

2019/UK/Sony/RCA

Genre:Alternative-Rock/Electronic-Rock

デスコアシーンから頭角を現し、そこから自身の音楽性を変化させ続けることでメジャーなロック/ポップスシーンへの進出に成功した、イギリス出身5人組バンドの6th。ニューメタル/ヒップホップ/ダンス/クラブミュージック・ポップスがひとつに交わる"2019年のスタジアム・ロック・アルバム"。バンドサウンド解体&エレクトロ化を推し進め、“心の闇”や“どのジャンルにも属せない苦しみ・属さない覚悟”を歌詞に込めた、反骨精神の塊のような作品だ。客演にGrimes・Dani Filth・Rahzelを起用している点や、各音楽ジャンルからの影響が現れたミュージックビデオからも分かる通り、本作では「メタルの進化/メジャー化」のみならず「ポップスのヘヴィ化」を図っているのも興味深い。

2010年代に最も輝かしい功績を収めたメタル/ラウドロック系出身アーティストの最高傑作として、また、奇妙なひねりの効いたポップス/ロックアルバムとして、二つの視点から楽しめる一枚だ。

 

19.Fennesz + Sakamoto - Cendre

2007/Austria/Japan/Touch/Commmons/Rhythm Zone

Genre:Ambient

オーストリアと日本を代表する電子音楽アーティストによるコラボレーションアルバム。

「坂本教授が奏でる静謐なピアノの旋律を、Fenneszの生み出す微細なノイズでコーティングする」手法で制作された全11曲が並ぶ。ピアノの旋律をただ聴き流すだけでもよし、微細なノイズに耳を澄ませるもよし。曲としての完成度はもちろん、「アンビエント」としての機能性も同ジャンル内で最上の、一家に一枚レベルの名盤。

 

18.BUCK-TICK - No.0

No. 0

No. 0

2018/Japan/Victor

Genre:V-ROCK/Industrial-Rock/Gothic-Rock

日本のヴィジュアル系シーンの草分け的バンドによる21th。

ゴシック・ロック/ニューウェーヴの暗黒性に歌謡的なキャッチーさを加えた「元祖V系サウンド」が、現代の電子音楽に通じる超強力なサウンド・プロダクションにより“音響芸術”と化した、謂わば「10’sインダストリアル/ゴシック歌謡ロック」とも呼べる世界観を開拓した一枚。80年代から現代までの日本/海外の方法論が溶け合った音楽性はまさに、30年間最前線を駆け抜け続けた彼等のみにしか辿り着けない境地。

本作は終盤の畳み掛けがとてつもなく秀悦であり、それらの部分のみでもある程度ストーリーが完成されている。(『ゲルニカの夜』〜『胎内回帰』をライブで観た時は、思わずその場で涙をボロボロ流してしまった記憶がある…。) ヴィジュアル系電子音楽ファンでない方も、是非本作のラストシーンはお聴きいただきたい。


17.Travis Scott - Birds in the Trap Sing McKnight

Birds in the Trap Sing McKnight

Birds in the Trap Sing McKnight

  • ラヴィス・スコット
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1630

2016/US/Grand Hustle/Epic

Genre:Trap Music

アメリカ・アトランタ州出身ラッパーの2nd。初期衝動の熱さと豪華なフィーチャリングが特徴の1st『Rodeo』、トラップ・ミュージックを更に生々しくサイケデリックに進化させた3rd『ASTROWORLD』にはない、陰鬱なオーラと冷ややかな閉塞感に包み込まれているアルバムだ。

 

16.Meshuggah - Nothing(Remix) 

Nothing (Remix)

Nothing (Remix)

  • メシュガー
  • メタル
  • ¥1528

2006/Sweden/Nuclear Blast

Genre:Progressive-Metal/Djent

“Djent”の父にして・スウェーデンを代表する5人組エクストリームメタル・バンドによる4th。

彼等のアイデンティティとなっているのは言わずもがな、その反復していく変則的なリズム。彼等のフォロワー的バンドは無限に存在するものの、「恐ろしく緻密であるのにも関わらず“終始4/4拍子”」という、彼等独自の作曲法まで盗むことが出来たアーティストはほんの一握り。彼等の音楽性は年々深化しているのだが、彼等が自らに課した「4/4拍子ルール」が破られることは決して無いため、オーディエンスも理解不能に陥ることはないのだ。

本作は2nd『Destroy Erase Improve』で確立させた独自の音楽性を完成に至らしめた一枚。スロー~ミドルテンポで無機質なリズムをストイックに刻み続ける様は「人力ミニマルミュージックとメタルの融合」とも呼べるだろう。始めこそ8弦ギターの音圧に圧倒されるのだが、聴き慣れていくうちに不思議と“chill”を感じられるようになる。彼等が生み出す超堅牢なビートに身を任せる安心感は格別だ。

音楽から暴力性と“chill”を同時に感じたい方は是非。

また、6th『obZen』・8th『The Violent Sleep of Reason』等、純粋なエクストリーム・メタルとしての傑作も数多く残しているので、それらも併せてお聴きいただきたい。

 

15.gibkiy gibkiy gibkiy - 不条理種劇

f:id:KayamahMusic:20191229155830j:image

2016/Japan/praying mantis

Genre:V-ROCK/Gothic-Rock/Experimental-Rock

Vo.kazuma(ex:Merry Go Round/ex:Smells)

Gt.aie(the god and death stars/ex:deadman/ex:the studs/ex:KEEL etc...)

Ba.kazu(ex:蜉蝣)

Dr.sakura(ex:L’Arc~en~Ciel/ex:SONS OF ALL PUSSYS/ex:Rayflower/ex:Creature Creature

以上のヴィジュアル系出身ベテランプレイヤー4人で構成されたスーパーバンドによる1stアルバム。

かの昔、80年代ロックのダーティーな要素(ゴシック・ロック/ニューウェーヴ/ハードコア ・パンク/ヘヴィメタル等)を闇鍋にしたスタイルのヴィジュアル系バンドは「名古屋系」と呼ばれていたが、本作はその系譜の最終進化系+αとも言える音楽性だ。

本作の収録曲のほとんどは、2人組即興演奏プロジェクトhighfashionparalyze(Vo.kazuma/Gt.aie)で発表済みの楽曲にリズム隊を加えた“リメイク”となっている。Gt.aieが不協和音まみれのリフを掻き鳴らし、Vo.kazumaが呪詛の如き低音ボーカルと枯れたスクリームを吐き散らし、Ba.kazu・Dr.sakuraが前述の2人を支えてロックらしいバンド・アンサンブルに上手くまとめ上げる…。各メンバー同士の緊迫感漂う関係性(音楽的な意味)も、その制作背景から生まれたのだろうか。アングラ臭満載のザラついた音質も演奏の緊迫感を強固にしていて、なかなかそそる。

また、彼等は恐らく意図していないのであろうが、ゴシック・ロック/ハードコア ・パンク/グランジ/ブラックメタル/マスロック/ジャパノイズ等を彷彿とさせる要素を垣間見せるのも興味深い。彼等は偶然にも、「退廃的ロックの歴史の総括」的な作品を生み出してしまったのだ。

各種ストリーミング及びダウンロード購入サイト配信無し。CDも一般流通はされず、取り扱いは公式通販のみ。敷居の非常に高い作品だが、入手困難になる前に是非手に取っていただきたい。

 

14.THA BLUE HERB - Stilling, Still Dreaming

STILLING, STILL DREAMING

STILLING, STILL DREAMING

1999/Japan/THA BLUE HERB RECORDINGS

Genre:Japanese HIP-HOP

平岸、札幌、北海道が誇る3人組(MC・DJ・ライブDJ)ヒップホップグループの1st。当時の北海道(郊外)から東京(日本語ラップシーンの中心)への挑戦状としても知られる、日本語ラップ史を語る上では避けて通れない一枚だ。

ヒップホップ本来の“下克上の精神”を、哲学的/スピリチュアルな言語表現、変則的に散りばめられたライム(韻)、「客のノリなど知ったことか」と言わんばかりの獰猛に畳み掛けるフロー、ザラついたドラム音の上で儚いギター・ストリングス・民族楽器のメロディーが鳴り響くO.N.O.製トラックで武装し、彼等なりのヒップホップの解釈を形に表している。「ギャングスタラップ」「コンシャスラップ」「文系ラップ」「アブストラクト」のどれでもない、しかしヒップホップマナーから外れる瞬間は一瞬たりとも無い、“異端”かつ“王道”な在り方が本作の唯一無二たる所以だろう。

また、「北の本物は、言い訳や、負け惜しみを堪えてやるべきことをやるんだよ」「北から頂く」などといった、北に住む者全てに向けられた最高の激励の言葉が数多く綴られているのも、本作の最大の魅力。僕自身も、イラスト制作への自信を失いかけた時、『SHOCK-SHINEの乱』『孤憤』『COAST 2 COAST 2』『AME NI MO MAKEZ』には幾度と無く救われた。本作は日本語ラップヘッズのみならず、全ての創作者が聴くべきであろう。

「この皿をうまく使えよ望むなら、オマエの武器にもなるし知恵・力にもなろう」……

 

13.LUNA SEA - CROSS

Cross

Cross

2019/Japan/Universal

Genre:V-ROCK/Alternative-Rock/Post-Rock

5人組ヴィジュアル系ロックバンドの10thにして、再結成後3枚目のフルアルバム。結成30年目にしてまさかの最高傑作更新だ。プロデューサーSteve Lilywhiteの手腕により、サウンドのスケールが海外のスタジアム級にまで進化。もちろん、“ニューウェーヴ/ヘヴィメタル/J-POPを軸にあらゆる音楽要素を吸収し続ける” “5人のメンバーの個性を直接的にぶつけ合う”というバンドの在り方は健在であり、キャッチーながら既存のジャンルでは言い表せない曲ばかりが並ぶ。強いて言えば、本作は全体的にUKロック/ポストロックがベースにあり、そこへメタル/パンク的なアプローチ、バンド全体のタイトなリズム感等がアクセントとして組み込まれている…といったところか。

彼等は何かと「4th『MOTHER』が最高傑作」「活動再開〜終幕が全盛期」と語られがちだが、僕としては本作から聴き始めても何ら問題は無いと思う。むしろ、彼等は今が真の全盛期かも知れない…


12.Yes - Close To The Edge 

Close to the Edge

Close to the Edge

1972/UK/Atlantic

Genre:Progressive-Rock

 

11.Jan Garbarek & Bobo Stenson Quartet - Witchi-Tai-To 

1974/Norway/ECM

Genre:Jazz

ノルウェー出身のサクソフォニストとピアニストによるコラボレーション・アルバム。Jan Garbarekの鼻にかかったチャルメラの如きサックスの音色と、Bobo Stensonの透明感溢れるピアノのコントラストが美しい。Jan Garbarekはキャリアの中で様々のスタイルの作品をリリースしているが、メロディーの美しさは本作が一番。

 

10.Misery Signals – Of Malice & The Magnum Heart

Of Malice and the Magnum Heart

Of Malice and the Magnum Heart

  • Misery Signals
  • ロック
  • ¥1630

2004/US/Ferret

Genre:Metalcore/Post-Rock

アメリカ・ミルウォーキー出身5人組メタルコア/叙情系ニュースクール・ハードコアバンドの1st。『Taken - Between Two Unseens』『Mineral - The Power of Failing』と並ぶ、僕にとって最も「エモい」音楽アルバム。

カニカルに刻む変拍子ギターリフ/ブレイクダウンとポストロック影響下の神々しいギターメロディーを、初期衝動に任せたカオティックな曲展開に乗せて、力の限り乱射し続ける。崩壊寸前の複雑さを保ちながらも、聴く者の記憶に美メロの数々をしっかりと焼き付ける神がかったバランス感覚は、カリスマプロデューサー/サウンド・エンジニアDevin Townsendの手腕だろうか。

本作のハイライトは間違いなく、アルバムの終幕である9曲目『Five Years』~10曲目『Difference of Vengeance and Wrongs』。「そんなのありかよ」と思わず零したくなる怒濤の展開と美メロの洪水に涙が止められなくなる…


9.Hiroshi Yoshimura - Music For Nine Post Cards

1982/Japan/Sound Process

Genre:New-Age/Ambient

日本ニューエイジ/アンビエント界の伝説、吉村弘による1st。

これぞまさに普遍的名盤。完全ドラムレスの静かな空間でチープなシンセがポロリポロリと鳴り続ける、ただそれだけの音楽作品。それだけでありながら、どの瞬間も涙を誘うような儚いメロディーでいっぱい。僕も本作を聴く度、強い孤独を感じて枕を濡らしてしまう…。手法的にも音質的にも80年代の作品には全く聴こえない。

『Fennsez + Sakamoto - Cendre』『Brian Eno - Ambient 1: Music for Airports』と並んで誰にでも推薦出来る、「一家に一枚」レベルの作品。


8.John Coltrane – My Favorite Things

1962/US/Atlantic

Genre:Modal-Jazz

言わずと知れた“聖者”の代表作。『Giant Steps』『Ascension』『Expression』『Intersteller Space』と悩んだ末に本作をチョイス。


7.Led Zeppelin - Presence 

1976/UK/Swan Song

Genre:Classic-Rock/Hard-Rock

イギリス・ロンドン出身4人組ロックバンドの7th。4th『Led Zeppelin IV』でポピュラーミュージック史に残る名曲を生み出し、7th『Physical Graffiti』で実験をやり尽くした後に制作された、マイナスの美学を極めた一枚。彼等の奇妙なバンドグルーヴの妙味が最も熟成された作品は、本作だと思っている。


6.Sigur Rós - Ágætis byrjun 

1999/Iceland/Smekkeleysa

Genre:Post-Rock/Dream-Pop

アイスランド出身2人組(本作制作当時は4人組)バンドの2nd。本作以上に神々しい音楽アルバムを僕は知らない…。


5.Oneohtrix Point Never - Garden of Delete 

Garden of Delete

Garden of Delete

  • Oneohtrix Point Never
  • エレクトロニック
  • ¥1528

2015/US/Warp

Genre:Electronica/Experimental

興盛を極める現代エレクロトニカ・シーンの中でも頭一つ抜けた鬼才、Daniel Lopatinによるソロプロジェクトの7th。アンビエント路線を得意としていた彼がまさかの変貌。ロック(グランジ/メタル)由来の攻撃性、激しく揺れ動く静/動のダイナミズム、そして“歌”をフィーチャーした「OPN流のポップ・ミュージック」アルバムだ。

彼史上最高にポップなメロディーとギターリフのように鋭利なシンセがフィーチャーされた楽曲群は、 電子音楽ファンのみならずロック/メタル系ファンへの訴求力もバツグン。彼の掲げたコンセプトは伊達ではない。

また、無数のノイズ粒子が共鳴して無限の奥行きを演出するサウンド・プロダクションも本作でしか聴けない最高級品。 まるで、スタジアム・ロックバンドのライブ会場にいるかような錯覚すら覚える。本作をご鑑賞の際は、可能な限りロスレス音質&大音量での再生を願いたい。


4.Miles Davis - Get UP with It 

1974/US/Columbia

Genre:Fusion

『Bitches Brew』に並ぶ、電化マイルスの最高傑作。2枚組・全120分間に及ぶ、彼の音楽探求が生み出した巨大な結晶体だ。1970年・1972年・1973年・1974年に録音された8曲を収録した、謂わば“寄せ集め”的成り立ちをしたアルバムなのだが、音からは全く散漫な印象など受けない。音楽性も物凄い。ジャズはもちろん、クラシック、ロック、ファンク、アフリカ音楽など、あらゆる音楽ジャンルを飲み込んだココでしか聴けない曲がズラリ。本作でのマイルスはトランペットだけではなくオルガンも駆使し、サウンドをより重厚に仕立て上げている。

悲しい哉、今の僕の腕では、本作の音楽性を細かく分析して言語化するなんてとても不可能。何度聴いても底の見えない、マイルスの美学をこれでもかと詰め込んだ濃密なアルバム。


3.D'Angelo - Voodoo

Voodoo

Voodoo

2000/US/Cheeba Sound

Genre:Alternative-R&B/Neo-Soul

「ネオソウル」というジャンルを代表する名盤にして、00年代以降のブラックミュージックの基準となるアルバムの一つ。元々僕はメタル畑の人間であり、ブラックミュージックは勉強中の身なのだが、不思議なことに本作は背景知識を付けていけばいくほどドープになっていく。各プレイヤーの“ズレ”が巻き起こすグルーヴの妙味を追求した3rd『Black Messiah』も負けず劣らず名盤だが、ある種の“密室感”や“几帳面さ”が色濃い本作の方が好み。

 

2.King Crimson - Larks' Tongues in Aspic 

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Release:1973/UK/Island

Genre:Progressive-Rock

イギリス出身プログレッシヴ・ロックバンドの5thにして、第3期メンバーによる「メタル・クリムゾン」体制の第1作目。ブルース/ジャズ/現代音楽等を不協和音混じりのけたたましい音遣いで強引に融合させ、変則編成(ギター・ベース・ドラム・パーカッション・バイオリン)による即興性の高い演奏で叩きつける、類い稀な爆発力を秘めた一枚。僕にとって「エクストリームなロック」の頂点。本作はしばしば「難解」「敷居が高い」と評されるが、それは大きな誤りだ。演奏を無理にアタマで“理解”しようとせず、もっと直感的に“浴びる”ような聴き方をすれば、無限に膨張し続ける演奏のエネルギーを楽しむことが出来るはず。

有名過ぎるが故に何となく聴かず嫌いをしている方は、この機会に是非。かつてメタル・クリムゾンが志向していた破滅的な音楽は、2019年の現在も尚新鮮だ。

 

1.Pink Floyd - The Dark Side of The Moon 

1973/UK/Harvest

Genre:Progressive-Rock

僕にとっての永遠。本作は言わずもがな、『The Beatles - Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』『The Who - Tommy』等に並ぶ、世界で最も有名な“コンセプトアルバム”のひとつ。「音楽アルバム」という概念の存在意義を、これ以上明確に示した作品は他に無いだろう。

僕がどのような音楽ジャンルであろうとアルバム単位で鑑賞する理由は、全て本作に詰まっている。