カヤマのブログ

カヤマ・音楽アルバム100選(ver.2.0)【100位〜81位】

100.Meshell Ndegeocello - Comet, Come to Me

2014/US/Naïve

Genre:Alternative-R&B/Neo-Soul

アメリカ合衆国ワシントン州シンガーソングライター/ベーシストの11th。強靭なファンクネス、ヒップホップ由来のモダンなビート感覚、極上のメロウネス、それら全てを同時に演出してしまう密度の濃い音楽性はデビュー当時から衰え知らず。本作は名盤である3rd『Bitter』・5th『Comfort Woman』よりも“他者を寄せ付けない密室感”が薄まり、気軽に聴ける作品に仕上がっている。ベッドルームで延々と流し続けたいアルバムの一つ。

 

99.Tortoise - Beacons of Ancestorship

2009/US/Thrill Jockey

Genre:Post-Rock

ポストロック/シカゴ音響派シーンの生ける伝説である5人組バンドの6th。

彼等の幅広いバックグラウンドを未整理のまま音源にブチまけた、極上の「まかない料理」のような一枚。1曲目『High Class Slim Came Floatin’ In』は往年の作品に近いスタイル、3曲目『Northern Something』では奇妙にウネるグルーヴを生み出し、7曲目『Yinxianghechengqi』はTortoise流ハードコア ・パンク、9曲目『Monument Six One Thousand』はクラウト・ロック直系ナンバー…というように、全曲異なるスタイルが提示された一筋縄ではいかない作品だ。歴史的重要度や取っ付き易さは『Millions』『TNT』の方が圧倒的に高いのだが、本作には未整理故の「リスナー側が咀嚼して考える面白さ」があるのだ。

ポストロック/アンビエントの名作をある程度聴いた上で「綺麗すぎない“奇妙な余韻”が残る“響き”が聴きたい」という方は是非。

 

98.Moonchild - Voyegar

Voyager

Voyager

  • Moonchild
  • R&B/ソウル
  • ¥1528

2018/US/Tru Thoughts

Genre:Future-Soul/Neo-Soul

LA出身3人組ネオソウル/現代ジャズバンドの2nd。Amber Navram(Vo.)の歌声と2人のキーボーディストが紡ぎ続ける、ドリーミー&メロウなメロディーがたまらない。とにかくチルい。透明感のあるサウンド・プロダクションのおかげで、ポストロックや電子音楽(広義)の延長としても楽しめるのも興味深い。何度コレを聴きながら寝落ちしたことか…。

 

97.NIPPS - MIDORINOGOHONYUBI presents MIDORINOGOHONYUBI MUSIC/ONE FOOT

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2002/Japan/MIDORINOGOHONYUBI MUSIC/Universal 

Genre:Japanese HIP-HOP

アルバム構成の根本から完全にブッ壊れた、日本語ラップ界最高クラスのILLなアルバム。

 

96.Sunn O))) - Pyroclasts

Pyroclasts

Pyroclasts

2019/US/Southern Lord

Genre:Drone-Metal/Dark-Ambient

2019年に発表された本作と『Life Metal』の2作品は、彼等史上最も音の肌触りが美しい傑作だ。筆者は有機的な作風である『Life Metal』よりも、無機質なアンビエント側に振り切れた本作の方が好みであるが、作品の完成度はどちらも甲乙つけ難い。

 

95.Animals As Leaders – Animals As Leaders 

Animals as Leaders

Animals as Leaders

  • Animals As Leaders
  • メタル
  • ¥1528

2009/US/Sumerian

Genre:Progressive-Metal/Djent

黒人系8弦ギタリストTosin Abasi率いるインスト系メタルバンドのデビュー作。

プログレメタル/フュージョン直系ギター主体のインストを出発点としていながらも、電子音楽へと共振する要素をも兼ね備えた、ジャンルレスな価値観を持つ作品だ。

まず、Tosin Abasiのギターに注目。『Awake』期のDream TheaterやMeshuggahからの影響を窺わせる変則重低音リフを軸に、ジャズギタリストを思わせる水々しいクリーントーン、優雅にキメるフュージョンチックな高速ソロ、Allan Holdsworthを彷彿とさせる妖しいメロディー等を練り込みながら、グイグイと楽曲を進めていく。そして更に、Misha Mansoor(Gt.以外のプログラミング)が楽曲のアクセントに様々な電子音楽要素を注入。卓越したギター演奏をモダンなサウンド・プロダクションによって更に強化しているのだ。

メタル・プログレファンはもちろんのこと、Squarepusherやマスロック系バンドのファン、Jazz The New Chapter読者などにも強く推薦したい。

 

94.envy - Insomniac doze

2006/Japan/Rock Action

Genre:激情系/Real-Screamo/Post-Rock

激情系ハードコア・レジェンドである5人組バンドの4th。2nd『君の靴と未来』~3rd『a dead sinking story』で完成させた激烈なハードコア路線を早くも棄て去り、ポストロックに接近することでサウンドのスケールアップを図った作品だ。 日本語詞によるポエトリーリーディングアルペジオが儚げに響く“静”パートと、スクリームと轟音ギターが激情を演出する“動”パート、これら二つの対比を重ね続けることでドラマ性を増大させていく。その音に込められたメッセージは「怒り」「悲しみ」のようなマイナスの感情ではなく、むしろ全ての人間へと平等に与えられる究極の生の肯定に感じられる。特に3曲目『Scene(風景)』・7曲目『A warm room(暖かい部屋)』は、涙を誘う強烈なパンチラインが仕掛けられている。

本作は歌詞を聴かせることに大きな比重が置かれている作品のため、音楽性そのものよりも、彼等の歌詞世界が肌に合うか否かがリスナーに委ねられている。まずは1曲目『歪んだ先に』の冒頭の言葉が琴線に触れるか…そこで判断するのも良いだろう。

 

93.Nils Petter Molvær - Soild Ether

2000/Norway/ECM

Genre:Jazz/Electronica

ジャズ/アンビエント/トリップホップを融合させ、ノルウェー産らしいモノトーンな音遣いで味付けした、エクスペリメンタル・ジャズアルバム。仄かな暖かみを帯びた生演奏と無機質なエレクトロニクスが共存する、矛盾を孕んだ音世界は妖しくも美しい。

 

92.DJ KRUSH - BUTTERFLY EFFECT

BUTTERFLY EFFECT

BUTTERFLY EFFECT

2015/Japan/Es.U.Es Corporation

Genre:Instrumental HIP-HOP/Trip-Hop

 

91.Visible Cloaks - Reassemblage 

Reassemblage

Reassemblage

  • Visible Cloaks
  • エレクトロニック
  • ¥1528

2017/US/Inpartmaint/ RVNG Intl.

Genre: New-Age/Ambient

最高の瞑想用BGM。

 

90.GOJIRA - From Mars to Sirius

From Mars to Sirius

From Mars to Sirius

  • GOJIRA
  • メタル
  • ¥1681

2005/France/Listenable/Prosthetic

Genre:Progressive-Metal/Groove-Metal

フランス出身3人組メタルバンドの3rdにして、彼等の出世作デスメタル/ハードコア・パンク(NSHC)を上品に磨き上げたかのような逞しい演奏スタイル、アンビエント/ポストロックに通じる透明感を持つ音遣い、地球環境問題へのメッセージを”メロディーの宿ったスクリーム“に乗せて訴えるボーカル、これらを組み合わせて地球崩壊系SF映画さながらの壮大な世界観を構築する一枚だ。

エクストリーム・メタルの獰猛さ、アーティスティックなエッセンス、キャッチー性のバランス取りが非常に巧みであり、他に類を見ない音楽性なのにも関わらず、意外なほどにサラリと全編聴き切ることが出来てしまう。

本作は「個性的なメタル」としてはもちろん、「ポストロックの亜種」としても鑑賞することが可能なので、「電子音楽やヒップホップは聴くけれどメタルはあまり…」という音楽リスナーこそ、是非この機会に如何だろうか。

 

89.…And You Will Know By The Trail of Dead - Source Tags & Codes

Source Tags & Codes (Deluxe)

Source Tags & Codes (Deluxe)

  • ...And You Will Know Us By the Trail of Dead
  • ロック
  • ¥1935

2002/US/Interscope

Genre:Alternative-Rock/Emo/Progressive-Rock

『エモ/USオルタナ/ポストロック版“Pink Floyd - 狂気”・“Rush - 2112”』と例えても過言ではない、アルバム全体で壮大な世界観を描くコンセプチュアルな一枚。

基本的にはSonic Youth的ノイズギターと90年代エモ由来の泥臭い泣きメロを融合させた音楽性なのだが、往年のプログレ系バンドからの影響も公言しており、アルバムの構成力はこの上なく完璧。Tool・The Mars VoltaPorcupine Tree等の作品群に並ぶ、「21世紀のプログレ」の金字塔的作品だ。本作はPitchforkで10点満点を獲得したことでも有名だが、それは決してハイプではなく妥当な評価だろう。

ちなみに、彼等のバイオグラフィーhttps://www.universal-music.co.jp/trail-of-dead/biography/)を見るに、音楽活動に対して「人類学的融合のセオリーを実現する」という明確なコンセプトが用意されており、メンバー全員がマルチプレイヤー&ボーカルという独特な編成で活動しているようだが、学の無い僕にはそれらが音楽的深みへと繋がっているのかは判断出来ない…。しかしながら、ライブ中に繰り返される楽器パートチェンジは観ていて胸が熱くなること間違い無しであるし、パフォーマンスの一環として成り立っているのは確かだ。

次作『World Apart』以降、より多くの音楽要素を取り込んだプログレ路線を推し進めている。各メディアから過小評価されているが、そちらも本作に劣らぬ傑作となっているため、本作が気に入った方は是非。

 

88.JPEGMAFIA - All My Heroes Are Cornballs

All My Heroes Are Cornballs

All My Heroes Are Cornballs

  • ジェイペグマフィア
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1935

2019/US/EQT Recordings

Genre:Experimental HIP-HOP


87.仙人掌 - VOICE

VOICE

VOICE

  • 仙人掌
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1833

2016/Japan/P-VINE

Genre:Japanese HIP-HOP/Jazz Rap

MONJU・DOWN NORTH CAMPでの活動や各アーティストへの客演等で知られる、東京出身ラッパーの1st。(過去に『Be In One’s Element』という全国未流通作のリリースもあったが…)

自らの日常生活を詩的なパンチラインへと変換したリリック、言葉の説得力を強固にするドッシリとしたフロー、ジャジー&ソウルフルなうねりを上げるトラックのコンビネーションで、聴く者の目の前に荒んだ街の姿を描き出す。それはまるで90年代の東海岸系ヒップホップを翻訳&現代的にアップデートしたかのような世界観だ。日本語ラップシーンでは「文系」「ギャングスタ系」「ジャジーヒップホップ 」は分裂してしまいがちであるが、本作にはそれらの全てが備わっている。真の意味で“スタンダード”な日本語ラップの傑作。全員必聴。

 

86.NITRO MICROPHONE UNDERGROUND - NITRO MICROPHONE UNDERGROUND

2000/Japan/Reality

Genre:Japanese HIP-HOP

 

85.Strapping Young Lad - City 

City

City

  • Strapping Young Lad
  • メタル
  • ¥1630

1997/Canada/Century Media

Genre:Industrial-Metal

Strapping Young Ladのリーダーにしてメタル系ソロアーティスト/プロデューサー、Devin Townsend自身が認めるキャリア史上最高傑作。

Devin Townsend自身によるメロディアスなスクリームと、1997年作とは信じがたい極上のサウンド・プロダクション、そしてメタル界随一の名手達によるブルータル・デスメタル並みの過激な演奏っぷりは何度聴いても衝撃的。本作の邦題『歌舞伎町から超剛鉄重低爆音』という言葉がまさにピッタリの音楽だ。

高速で鳴らされる楽器の音色が一切潰れることなく、無数の音の粒子となって降り注ぐ様は本作でしか味わえない。ノイズ、シューゲイザー、ポストロック等、「音の粒子を浴びる快楽」を追求する音楽ジャンルは多数存在するが、本作はそれらの歴史的名盤にも全く劣らない。「メタル」というジャンルの音響感のイメージを覆されるアルバム。全員必聴。

 

84.Saosin - Saosin

2006/US/Capitol

Genre:Post-Hardcore/Screamo

アメリカ合衆国カリフォルニア州出身4人組スクリーモ/ポスト・ハードコアバンドの1st。1st EP『Translating the Name』でシーン全体から名声を受け、ボーカル変更や2nd EP『Saosin EP』を挟み、約3年を経てのリリースとなったため、当時のファンにとっては文字通り“満を辞してのフルアルバム”だ。透き通ったハイトーンボーカルと、キラキラしたフレーズを連発するギター、手数任せでカッ飛ばすドラムは聴いていて最高にスカッとする。メタル/メロディックパンク/ポストロックのミクスチャースタイルとも言えるような彼等の音楽性は、音の瞬間加速度を極めた一つの到達点のようにも聴こえる。

今となっては「スクリーモ/ポスト・ハードコア界永遠の名盤」として語られている作品だが、聴く際には身構えず肩の力を抜くべき。頭捻って聴くタイプの音楽ではないよね。

 

83.Arti & Mestieri - Tilt

Tilt

Tilt

  • Arti + Mestieri
  • ポップ
  • ¥1630

1974/Itary/Cramps

Genre:Progressive-Rock/Jazz-Rock

イタリアン・プログレッシヴ・ロックの代表的名盤。超絶ドラマーFurio Kirikoのプレイは必聴。

 イタリア出身6人組(Gt./Bs./Dr./Key./Sax./Vn.)バンドの1st。イタリアン・プログレの名盤談義では必ず名の挙がる一枚だ。Furio Chiricoによる千手観音じみた手数のドラムを軸として、残りの5人がイタリア産らしい暖かみを帯びたメロディーを絡めつつ、多様な展開を見せながらアルバム内にひとつの世界観を構築していく。

彼等の音楽性のベースとなっているのはテクニカル&シンフォニックを極めたジャズロックだが、地中海音楽やフォークからの影響を ギターやシンセサイザーをフィーチャーするパートが 作品全体は和やかな雰囲気に包まれているのもポイント。超絶技巧ドラムに耳を傾けるも良し、アルバム全体の高い構成力を味わうのも良し、のんびりとメロディーを聴き流すも良し。聴く者や場所を選ばない作品なので、是非一度気軽に手に取っていただきたい。

 

82.Rainbow - Rising 

Rising (Deluxe Edition)

Rising (Deluxe Edition)

  • レインボー
  • ハードロック
  • ¥1935

1976/UK/Oyster/Polydor

Genre:Hard-Rock

1976年にして既に「クサメタル」の原型を完成させた名盤。『Stargazer』の荘厳過ぎる世界観と、Cozy Powell(Dr.)のパワフルなプレイは聴くたびに思わず笑ってしまう。

 

81.呂布カルマ - 四次元HIP-HOP

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2010/Japan/名港Recordings

Genre:Japanese HIP-HOP

MCバトルで頭角を現し、今やヒップホップ・シーン外でも広く名の知られる名古屋出身ラッパーの2nd(初の一般流通)。硬い押韻をひょいひょいとキメつつ気に入らないモノにとことん毒突いていく様は、いつの瞬間も冷酷非道でありながらクレバー。しかし彼は、痛烈なdisの嵐の中で創作者としての覚悟をポロリと零す一面もあれば、思わずクスりとさせられるユーモアセンスも持ち合わせている。それらの側面を繋ぎ合わせ、リリック上に“一人の男の哲学”を映し出すのが彼のラップスタイルだ。(その哲学が“事実”なのか“虚構”なのかを追及するのは野暮だろう。)

本作では、4th『The Cool Core』・5th『SUPERSALT』で確立した“抽象的な言語表現の多用&斜めの視点から繰り出す皮肉/現代風刺”スタイルではなく、ド直球なdisと人間臭い熱量のこもったラップが堪能出来る。使用されているトラックも、現在と比べて全体的にBPMが速い印象だ。破壊衝動に駆られた時に聴きたい、徹頭徹尾“強い”一枚。