80.Autechre - Oversteps
2010/UK/Warp
Genre:Electronica/IDM
79.L'Arc~en~Ciel - REAL
2000/Japan/Ki/oon
Genre:Alternative-Rock/J-POP
90~00年代にかけて日本のロック/ポップスシーンを牽引し続けた国民的ロックバンドの7th。
ハイペースのシングル連続リリース・アルバム『ark/ray』2枚同時リリース等の反動から、「バンドの長所を濃縮する」という意識の下に制作された本作は、彼等のディスコグラフィでも一番「各メンバーのバトル」に焦点が当てられた仕上がりだ。「当時のバンド内に張り詰めていた緊張感をそのまま音へと昇華した」というのは考えすぎだろうか。
甘い浮遊感を帯びたメロディと、バンドサウンドを彩るエレクトロニクス、hydeの優しげな歌声が絡み合う様子からは、彼等の核は変わらず「ニューウェーヴ」であることが伺える。
しかし、強靭なうねりで主張するベース、パチリパチリと刺々しい音を連打するドラム、ザラついたリフを掻き鳴らすギターを聴けば、いつもの姿とのギャップに驚くはずだ。
彼等がここまで激しく火花を散らした瞬間は、後にも先にも無いだろう。 これは「メタル」や「ハードコア」、ましてや「プログレ」などとも違う、90年代以降の「オルタナティヴ」な重さ。音楽性の全く異なる4人が集まり、今にでも崩れ落ちそうなバランス感覚でポップソングを鳴らす、精神的な意味での重さだ。
そう、このアルバムはJ-POPシーンのトップに君臨しているにも関わらず、80年代のイギリスと90年代のアメリカの空気感を味わうことの出来る、他に二つと無い特性を持つ作品なのである。特に、本作のハイライトとなる6曲目『finale』は当時の音楽性をよく現した名曲なので是非。退廃的なゴシックロック調を軸にしつつ、メタリックなエッセンスを交えながらより深く深く沈んでゆく、彼等にしか作り得ないバラードナンバー。
78.The Band - Music From Big Pink
1968/Canada/Capitol
Genre:Classic-Rock/Roots-Rock
ご存知、60年代ロックを代表する歴史的名盤のひとつ。クラシックロック全般に疎い僕が本作をわざわざ語る意味は無いだろうが、やはりいつ聴いても痺れる。
メロディーはポップでありながら、演奏自体は物凄くモタれるようなグルーヴ感に溢れている。このアルバム全体が「優しい重さ」に包み込まれているのだ。もしタイムマシンで60年代へ行けたとしたら、僕は必ず彼等のライブを観に行くだろう。
77.A Tribe Called Quest - We Got It from Here... Thank You 4 Your Service
2016/US/Epic
Genre:Jazz-Rap
NY・Native Tangの一員だったヒップホップグループの4thにして、18年のインターバルを経て発表されたラストアルバム。
アルバム全体のタイトさは歴史的名盤である2nd『The Low End Theory』に一歩譲るが、本作はキャリア史上最高濃度のジャジーなムードと円熟感を持ち合わせている。「ヒップホップ」というより、より広義の「ブラックミュージック」として気持ちのいい名盤。
76.James Blake - Assume Form
2019/UK/Polydor
Genre:Post-Dubstep
イギリス出身シンガーソングライターの4th。彼の1st『James Blake』はネオソウルとダブステップ以降のクラブミュージックを融合させた、2010年代の音楽シーンで最も強い影響力を持った“実験的ポップミュージックの歴史的名盤”であったが、本作では持ち前のR&B/Soul濃度を高めることで1stの更に上の次元に到達した印象だ。
以前までの彼が放っていた神秘的な美しさは失われたが、その代わりにボーカルメロディーの深みが数段増している。最先端のサウンド・プロダクションと人間の暖かさは共存出来ると知らしめた一枚。
75.Keith Jarrett - The Melody At Night, with You
1999/US/ECM
Genre:Jazz
74.Pain of Salvation - In the Passing Light of Day
2017/Sweden/InsideOut
Genre:Progressive-Metal
Daniel Gildenlöw(Gt.&Vo.)率いる、文学・哲学的プログレッシヴ・メタル・バンドの9th。5thから脱プログレメタルを試み、民族音楽・ミクスチャー・70年代ハードロック・70年代プログレ等、様々な音楽探求を繰り返していたのだが、ここに来てまさかの原点回帰。「メタル」という枠に留めておくにはとても惜しい、美意識の高い退廃的な世界観を描き出す名盤。本作の評価は各所で「まぁまぁ良い」といった程度の反応だが、個人的には最高傑作だ。
73.e.s.t(Esbjörn Svensson Trio)- Leucocyte
2008/Sweden/ACT Music
Genre:Nu-Jazz
スウェーデン出身ジャズ・ピアノ・トリオによる10thにして、バンドの中心人物であるEsbjörn Svensson(Pf.)の遺作。(後に『301』という2枚目の遺作をリリースしている)
72.FACT - FACT
2009/Japan/maximum10
Genre:Post-Hardcore/Screamo
日本ラウドロック界の伝説的バンドによる2ndにして、彼等のメジャーデビュー作。ボーカルを主軸に置きつつも、スラッシュメタル系バンド顔負けの鋭利なギターリフと、ひょいひょいと繰り出されるプログレッシヴな曲展開、複数メンバーによるスクリームの掛け合い等を取り入れた音楽性は疾走感抜群。「メタルとエモの融合」というテーマ自体は有り触れているものの、それをここまで個性的な形でやってのけたアーティストは存在しないだろう。
余談ではあるが、本作の3曲目『a fact of life』は僕がロック全般に興味を持つキッカケとなった一曲だ。YouTubeの自動再生機能でこの曲に偶然出会えていなければ、恐らく今の僕は未だにアニメ・ゲーム以外の趣味を持てていなかっただろう。
71.Sleep - Dopesmoker
2003/US/Tee Pee
Genre:Stoner-Rock
ドゥーム・メタル/ストーナー・ロック界の伝説的名盤。収録内容はなんと1曲63分間、それも鳴らされるのはブルージーで分厚いバンドサウンドのみ!ある意味「“ロック”というジャンルの限界」に挑戦している作品だ。
本作の音楽性は一見すると馬鹿げた試みとしか思えないのだが、実際に聴けばこれが単なる“お遊び”ではないことがすぐに分かるはず。冗長さなど全く感じさせないほど、全ての瞬間が緻密に構築されているのだ。無茶苦茶なテーマの割に恐ろしいほど聴きやすく、ミニマル感もたっぷりなもんだから、「本作は1種類のリフのみで構成されている」 という偽の噂が出回るのも無理はないか……。これにはSteve ReichやTerry Rileyもビックリだろう。
ちなみに、あまりに非商業的な内容のためにレーベルから反発を受け、一度短縮版をリリースする羽目になったという逸話もある。そういったエピソードも含めて、本作は間違いなく唯一無二の一枚。
70.Robert Glasper - Black Radio
2012/US/Blue Note
Genre:Alternative-R&B/Nu-Jazz
Robert Glasperのディスコグラフィから一枚選ぶなら、ベタなチョイスだが今作。本作とMark Guilianaのおかげで「Jazz The New Chapter」という雑誌を知ったし、僕にとって現代ジャズの入門編となった作品。
69.Osanna - Palepoli
(Disc2に『Palepoli』全曲2015年再録ver.収録)
(Disc2に『Palepoli』全曲2015年再録ver.収録)
1972/Itary/fonit Cetra
Genre:Progressive-Rock
イタリアン・プログレシーンが誇る闇の名盤。
初期King Crimsonのヘヴィ性・Genesisのシアトリカル性を強く受け継いだ音楽性であるが、本作はそれらとは比べ物にならないほどダークで、ブルージーで、オペラティックで、アバンギャルドで、そして埃臭い。おまけに演奏も曲展開もドタバタで思わず笑ってしまう。分厚い轟音を鳴らすギターとベース、ブレーキの外れたようなドラム、自由に泣き続けるフルート、それらとは対照的に神々しい音色を鳴らすメロトロン。これらが力技で組み合わされ、ひとつのコンセプトアルバムとなっている。確かな構築美と素敵なポンコツ感を併せ持った、まさに70年代のイタリアらしさ溢れるカルト・マスターピース。
ちなみに彼等は演劇要素を自らの表現に取り入れているようで、本作のライブは役者を交えて行われたそうだが、詳しくは僕も存じない。DVD等に残っているなら是非一度観てみたいものだ。
68.diSEMBOWELMENT - Transcendence into The Peripheral
(コンピレーション盤)1993/Australia/Relapse
Genre:Death/Doom-Metal
オセアニアのアンダーグラウンド・メタル・シーンが誇る他に類を見ぬ怪作。
オーストラリア・メルボルン出身4人組バンドによる最初で最後のフルアルバム。デス/ドゥーム系メタルにおける最重要作品のひとつだ。(そもそもデス/ドゥーム自体がマイナーなジャンルなのだが…)
デスメタルというジャンルは「物理的な“激しさ”を追い求める音楽」というイメージを持たれがちだが、実は「アトモスフィア」も非常に重んじる音楽だ。Morbid AngelやAutopsy、Obituary等、初期デスメタル・シーンを見渡せばそれは容易に理解出来るだろう。そして本作は、そういったバンド達が鳴らしていた“暗黒ドロドロ路線”の極めつけ。
音数を極端に絞ったスローパート、宗教じみたスキャットとギターフレーズ、唐突な爆走パート、これらを組み合わせて一つの大曲を構築していく。B級臭い閉塞感のある音質も相まって、妙に生々しい暗黒性を持っている。再生することすら恐ろしい…。
エクストリーム・メタルの延長でありながら完全に「遅効性」の音楽性なので、完成度の高い名盤とは言え、やはり聴く者をどうしても選ぶ。オカルト/ホラー的な雰囲気の音楽がお好きな方は是非。
67.Nine Inch Nails - The Fragile
1999/US/Nothing/Interscope
Genre:Industrial-Rock/Alternative-Rock
NINの3rdにして最高傑作。本作はどちらが前半/後半と明確には決められておらず、完全に独立した作品『Left/Right』が同じパッケージに詰め込まれた“ダブル・アルバム”。僕はよりキャッチーな曲の多く収録された『Left』派だ。
66.lynch. – XIII
2018/Japan/KING
Genre:V-ROCK/Metalcore
「ヴィジュアル系×ラウドロック」を掲げる者は数あれど、彼等ほどその双方の“様式美”を深く理解し、融合させることに長けたバンドは他に存在しないだろう。
モダンヘヴィネス/UKロックの方法論を対比させてゆくツインギター・玲央と悠介、鋭いフォールスコードスクリームと妖艶な中~低音域のクリーンボイスを操る葉月が核となって鳴らす、「90年代と10年代を繋ぐロックサウンド」はありそうで他に無い。本作では一切の贅肉を削ぎ落としたことでキャッチー性は薄れてしまったものの、それと引き換えに、より深みのあるメロディと空間表現を手にした。
その音楽性の深化がより顕著に現れているのは、本作のラストナンバー『A FOOL』だろう。彼等の普遍の美学である「ツインギターの対比」が磨き上げられた末に辿り着いた境地。大地を揺るがすような轟音7弦ギターリフと、天に瞬くようなディレイがかったクリーントーン・ギターのメロディ、それらが溶け合って紡ぎ出される幻想世界に、誰も触れることは出来ない……
65.Wilco - Yankee Hotel Fontrot
2001/US/Self-released/Nonesuch
Genre:Country-Rock/Indie-Rock
自称「オルタナ・カントリー」バンドの4thにして、USオルタナ史に遺る言わずと知れた名盤。
彼等は初期こそ愉快な田舎臭さを纏うカントリー色の強い音楽性であったが、作品をリリースする毎にポストロックへと接近。そして本作で音響派の巨匠Jim O’Rourkeの力を借りつつ、彼等の美学は完成に至った…というわけだ。
本作が素晴らしいのはもちろんのことだが、初期作品・5th『A Ghost Is Burn』6th『Sky Blue Sky』等も大傑作のため、彼等の最高傑作を決めるのは難しい。今の僕の気分では本作が一番であるけれど、本稿の投稿日が1日でも違えば別の作品を挙げていたかも知れない。
64.Gil Evans - The Indivisualism of Gil Evans
1964/Canada/Verve
Genre:Jazz
63.THE 1975 - I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It
2016/UK/Dirty Hit/Interscope
Genre:Indie-Rock/New-Wave/Dance-Rock/Synth-Pop
62.Mark Guiliana Jazz Quartet - Jersey
2017/US/Motema Music
Genre:Nu-Jazz
現代ジャズ・R&B・電子音楽・ポップス界の最前線をひた走るカリスマ・ドラマー、Mark Guiliana率いる4人組ジャズバンドの2nd。彼がしばしば口にする『Beat Music』という言葉通り、タイトなバスドラムを軸としたパワフル過ぎるプレイスタイルは本作でも健在。
本作でも主人公はやはり_Mark Guiliana。己の身一つで、変則ビートの“空間”を創り出してしまう。そこにバンドメンバーであるJason Rigby(T.Sax)、Fabian Almazan(Pf.)、Chris Morrissey(Ba.)が素朴に、それでいて趣深く“色彩”を与えていく。お陰で、ガワは「ジャズ」であるものの、本質的には変態的という、独特の雰囲気が生まれているのだ。
彼の本領発揮は、IDM・ヒップホップ等の影響を直接的にアウトプットした『Beat Music』『My Life Starts Now』『Mehliana: Taming the Dragon』等の作品群であるだろうが、私としては贅肉を削ぎ落とし切った本作が一番のフェイバリット。彼の入門編としても強く推薦しよう。
61.The Velvet Underground - The Velvet Underground & Nico
1967/US/Verve
Genre:Classic-Rock/Experimental-Rock