60.Chick Corea - Return To Forever
1972/US/ECM
Genre:Fusion
59.Refused - The Shape of Punk to Come: A Chimerical Bombination in 12 Bursts
1998/Sweden/Burning Heart/Epitaph
Genre:Hardcore-Punk/Post-Hardcore
スウェーデン出身4人組バンドの3rd。言わずと知れた、北欧パンク/ハードコア史に残るクラシック・アルバム。シンプルなギターリフと甲高いスクリームのみで攻めていくオーセンティックなハードコア ・パンクに、アンビエント・ジャズ・仰々しいストリングス等の無数のアイディアが組み込まれた、若々しい衝動性と挑戦心溢れる一枚だ。キャッチーかつ前衛的な爆音の数々は、まるでカラフルなおもちゃ箱をダイナマイトで爆破したかのよう。
特に、バンドの代表曲である6曲目『New Noise』は全員必聴級の名曲。(AnthraxやThe Used等もカバーしているほどだ!)
ちなみに、本作の題名は『Ornette Coleman - The Shape of Jazz to Come』のパロディとなっている。これにニヤリとさせられたジャズマンの方々も是非。「パンク来るべきもの」の名は伊達じゃない。
58.ERRA - Augment
2013/US/Tragic Hero
Genre:Progressive-Metalcore/Djent
音楽性のベースとなっているのは、クリーンボーカルとギターの紡ぐ壮大なメロディーを主軸にしたメタルコア/ポスト・ハードコア。そこへ持ち前の演奏技術を活かしたテクニカルなフレーズやピアノ/アンビエント系のプログラミングを組み込み、より高みへと押し上げたのが彼等の志向する「プログレッシヴ・メタルコア」だ。
キャッチーなメロディーで満たされた序盤から、実験的なアプローチの溢れる中盤~終盤に雪崩れ込み、インタールード+7分半の大作で幕を閉じるアルバム全体の構成も素晴らしい。
彼等は来日経験や日本への音楽的影響も大きく、「日本産Djentバンド」というと8割方が彼のフォロワー的サウンドだ。海外産メタルコア/Djent系ファンのみならず、日本産ラウドロックバンドの音楽ルーツを理解する上でも、聴いて損は無いだろう。
57.Ulver - ATGCLVLSSCAP
2016/Norway/House of Mythology
Genre:Post-Rock/Ambient
ブラックメタル/フォーク/ゴシック/インダストリアル/トリップホップ/アンビエント/ポストロック/ポストクラシカル/映画音楽/ニューウェーブ等、作品ごとに音楽性を目まぐるしく変えるノルウェー出身4人組バンドによる13th。
音楽性としてはアンビエント・ドローン等のジャンルに当たるが、ライブテイク音源を加工して制作された本作は全編通して熱量たっぷり。さらに、真っ直ぐ滑らかに繋がるアルバム構成を崩すことなく、全曲違った形に仕上げられているのだから聴き応えも十分。歌モノ、ロック色の強い楽曲、リズムの主張が強い楽曲等、アンビエントと離れた楽曲も多数収録されているのにも関わらず、全体としては違和感無く溶け込んでいるのだから不思議なものだ。
アルバム全体を通して、徐々にヒートアップしていく音楽がお好きな方は是非。
56.Between The Buried And Me – Colors
2007/US/Metal Blade
Genre:Progressive-Metal/Avant-garde-Metal
自称「アダルト・コンテンポラリー・プログレッシヴ・デスメタル」バンドの4th。古今東西の音楽を繋ぎ合わせながら、アルバム全体で一つの壮大なドラマを描く様は、まさに「デスメタル版『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』」という言葉が相応しい。進化してゆく音楽史をそのまま見せられるような摩訶不思議な体験を味わえる作品だ。
彼等の音楽の基礎となるのは、矢継ぎ早にメロディックなフレーズを紡いでいくテクニカルなデスメタル。そこにエモ、サイケ、民族音楽、ジャズ/フュージョン、ラテン、ブルース、ブルーグラス等、無数の音楽要素を織り交ぜて、ひとつのジャンルではとても括れないカラフルな楽曲を作り出す。あらゆる既存の音楽手法をコピーし再構築するという意味では、ある意味ヒップホップ的な発想とも言えるだろうか。ここまでジャンルレスに振り切れたアーティストは、ロック全体を見渡してもなかなか存在しないだろう。
5th『The Great Misdirect』・6th『The Parallax II: Future Sequence』も同様に彼等の美学を極めた作品なので、どれを最高傑作とするかは個人の好みによるだろう。
ひとつのジャンルに縛られない、型破りな大作がお好きな方は是非。
55.Opeth - Blackwater Park
2001/Sweden/Music for Nations/Koch
Genre:Progressive-Metal/Gothic-Metal
Mikael Åkerfeldt(Gt.&Vo.)率いる5人組(本作制作時は4人組)バンドの5th。彼等がデビュー当時から志向していた、独自の「プログレッシヴ・デスメタル」スタイルは、本作で遂に完成にまで至った。プログレッシヴ・ロック/デスメタル/フォーク/ゴシック・ロック等の雑多な音楽要素が、本作の中では退廃的な物語を描くためのツールとして完璧に使いこなされる。
同ジャンルのAtheist・Cynic・Sadist等にも言えることだが、一歩間違えば独りよがりな音楽実験に成り果ててしまうテーマを、針に糸を通すかの如きバランス感覚で“芸術的”な域まで到達させている様には度々驚かされてしまう。アートなヘヴィメタル系の入門編としても最適なアルバムだ。
54.The Dillinger Escape Plan - One of Us Is the Killer
2013/US/Sumerian
Genre:Mathcore/Progressive-Metal
アメリカ・ニュージャージー州出身5人組(本作制作当時は4人組)バンドの5th。
彼等は、圧倒的な演奏技術とフリージャズ/電子音楽由来の緻密なビート感覚を駆使して暴走の限りを尽くす「マスコア」という音楽ジャンルの創造主だ。
2nd『Miss Machine』以降は肉体的な過激さの追究のみではなく、ポップなメロディーの導入やジャズ/インダストリアル要素の増加によって、よりジャンルレスなロックバンドへの進化の路を歩んでいたのだが、此処に来ていよいよ円熟味を帯びてきた。鬼気迫る不協和音と斬れ味鋭いユーモアの雨嵐を浴びせてくれる一枚。
53.American Football - American Football
1999/US/Polyvinyl
Genre:Emo/Post-Rock
90年代エモ/ポストロック・シーンのスター、キンセラ兄弟率いるバンドによる1st。
変拍子を優しく捌いていくリズム隊を土台に、肩の力の抜けた歌声とツインギターの美しいアルペジオの絡みをひたすら聴かせるアルバムだ。また、トランペットが数曲で使用されていたりもして、なかなか洒落ている。ヴァース/コーラスの概念を強く意識させない曲構成であるものの、どの瞬間も美しいギターメロディーが絶えないおかげで、とても浸り込みやすい。曲間の切れ目(最後の曲→1曲目も含め)を全く感じさせない、淡々と繋がっていくアルバム構成も見事なもの。一時期の僕は本作を毎日2~3周流していたこともあるくらいだ。
90年代エモ/ポストロック系ファンから長きに渡って愛され続けている作品であるが、それに加えて「何とは無しにロック周辺の音楽をボーッと聴き流したい」という悩みがおありの方へも強く推薦したい。
52.Cecil Taylor - Unit Structures
1966/US/Blue Note
Genre:Free-Jazz
51.Anathema - Distant Satellites
2014/UK/Kscope
Genre:Post-Progressive-Rock/Progressive-Pop
アングラ耽美主義のゴシックメタルから、普遍的ポップネスの溢れるネオ・プログレッシヴ・ロックへ。個性的な活動エピソードを持つバンドの11th。
序盤~中盤では8th『We're Here Because We're Here』で提示・10th『Weather Systems』で完成させたバラード路線を踏襲し、終盤では新要素となる電子音楽(トリップホップ/アンビエント)的アプローチを試みた、バンドの円熟味と野心性の両方を堪能できる一枚だ。
本作でも特に素晴らしいのは、やはり彼等の十八番である壮大なバラード。ギター・ベース・ドラムが軽やかに刻む奇数拍子の上で、男女ツインボーカルが伸びやかな歌声を披露し、クライマックスでは神々しいピアノとストリングスの音色が乱舞する。毎度お決まりの展開と分かっていても、このダイナミズムの前には為す術無く涙を流してしまうものだ。
8th『We're Here Because We're Here』以降から今に至るまでの彼等は、まさに“第2の全盛期”のド真ん中。壮大な音楽がお好きな方は、是非この機会に一枚だけでもいかがだろうか?
50.Joy Division - Closer
1980/UK/Factory
Genre:Post-Punk/Gothic-Rock
ポスト・パンク/ニューウェーヴ/ゴシック・ロック・シーンにおける永遠の名盤であり、カリスマ的フロントマンIan Curtisの遺作。
「芸術は技術ではなくセンス」という言葉は誰もが冗談交じりで口にするが、それを最も体現しているアルバムが本作だろう。
パシパシポコポコと軽い音を鳴らすドラムと高音ベースが生み出す、不安定なミニマル・ビート。ガシャガシャと掻き鳴らされるノイジーなギター。ドン底のメロディーを奏でるチープなエレクトロニクス、そして内省的な歌詞を吐き出すIan Curtisのヘタウマ低音ボーカル。これらが集合したポンコツ過ぎるバンド・アンサンブルは、まるで“重み”も“肉体性”もありゃしない。しかし、この独特な演奏感が彼等のネガティヴな世界観とベストマッチ。まるで「幽霊が楽器を演奏して儀式を行なっている」かのような暗黒オーラを放っている。
特に本作の後半、段々と演奏から電子音楽へと比重が傾いていく楽曲の流れは“肉体が朽ちて精神のみが解き放たれる”ような感覚すら味わえる。以前、目を閉じながら本作の後半を聴き流した時は本当に精神がどうかしてしまうかと思った。恐ろしい…。
一般的には1st『Unknown Pleasures』が彼等の代表作とされているが、私からは本作を推薦しよう。
49.Rage Against The Machine - Rage Against The Machine
1992/US/Epic
Genre:Alternative-Rock/Rap-Rock
48.Bill Evans & Jim Hall - Undercurrent
1962/US/United Artists
Genre:Jazz
47.SEEDA - 花と雨
2006/Japan/KSR
Genre:Japanese HIP-HOP
00年代日本語ラップ・シーン最重要作のひとつ。『花と雨』のリリックには何度胸を刺されたことか。
46.Opus Avantra - Introspezione
1974/Itary/Artis
Genre:Progressive-Rock
個性的名作揃いのイタリアン・プログレッシヴ・ロック・シーンの中でも、一際輝きを放つ歴史的名盤。「Opus Avantra(Opera(オペラ)・Avantgarde(前衛)・Traditional(伝統)の3単語が由来)」というバンド名に恥じない、ロック・現代音楽・オペラを横断する美意識高い音世界を演出。僕が知る中では、「ロック×クラシック」という音楽テーマが最も自然な形で達成された作品の一つ。
聴く者を選ぶ作品であることは間違いないが、“ロック”の多様性を知る上でも聴いて損はしない一枚。全員必聴。
45.Duke Ellington - Money Jungle
1963/US/United Artists
Genre:Post-Bop
44.Steve Reich - Music for 18 Musicians
1978/US/ECM
Genre:Minimal
43.高柳昌行 - Mass Hysterism
2006/Japan/JINYA DISC
Genre:Free-Jazz
Spotify:(なし)
日本フリージャズ界における孤高のギタリスト、高柳昌行が率いる「ニュー・ディレクション・ユニット」による、1983年8月14日/明大前・キッド・アイラック・ホールにて録音されたライブテイク。メンバーは高柳昌行(Gt.)・飯島晃(Gt.)・山崎弘(Dr.)の3人。
ノイズまみれのツインギターと荒れ狂うドラムが生み出すのは、分厚い轟音の壁。メロディーも曲展開も計算もなにもあったもんじゃない、どこまでも破壊的な音楽だ。正直言って僕も全く理解出来ていないのだが、訳の分からないままこの音に浸り込んでしまっている。今の僕にとって、この世で最も“ブルータル”な音楽は本作だ。
42.Suffocation - Pierced from Within
1995/US/Roadrunner
Genre:Brutal-Death-Metal
ブルータル・デスメタル/テクニカル・デスメタルの偉大なる父による3rd。僕の最も好きなデスメタル・アルバムだ。
「スラッシュ/デスメタル/グラインドコア/スラッジメタル等、あらゆるエクストリーム・ロックの融合体」とリリース当時は評されたそう。メロディー感の薄いねじれたリフを連発するツインギター、ドス黒い低音でサウンドの閉塞感と圧力を高めるベース、そして知る人ぞ知る名ドラマーDoug Bohnによる一音一音が太過ぎる超音圧ドラム、これらの演奏がひとつになることで生まれるグルーヴは最凶。個々としては高い技術を持ちながらも、今にでも均衡が崩れて大爆発してしまいそうなバンド・アンサンブルはスリル満点だ。また、シーン随一の実力と個性を持つFrank Mullen(Vo.)のパフォーマンスも必聴。
後続のブルデス/テクデスへの影響力は言わずもがな、猪突猛進パートとビートダウンパート(低速)を対比させる曲構成は近年のデスコアにも影響を与えている。彼等のデビュー以降のデスメタル・シーンでは、彼等の影響を一切受けていないバンドの方が少ないだろう。「全てのデスメタルはSuffocationに通ず」と言っても過言ではない。
41.Underøath - They're Only Chasing Safety
2004/US/Tooth & Nail
Genre:Post-Hardcore/Screamo
アルバム毎に大幅な路線変更を繰り返す、6人組クリスチャン・ハードコアバンドの4th。本作は彼等の代表作として有名だが、実はキャリア史上最もポップに振り切れた“異色作”でもある。 Aaron Gillespie(Dr.&Vo.)の哀愁を帯びた歌声とSpencer Chamberlain(Vo.)の獰猛ながらも気高いスクリームを対比させた、王道のスクリーモ系ナンバーがギッシリ。しかしながら既存のフォーマットに沿うのみではなく、随所でアンビエントとの融合を図ることで、同ジャンルを更に一段上の音楽性へと進化させているため、聴きどころは多いはず。若々しい疾走感とクリスチャンバンドらしい透明感を堪能したい方は、是非。