100. Gil Evans - Gil Evans & Ten
Release: 1958
Origin: US
Label: Prestige
Genre: Jazz
カナダ・オンタリオ州出身ピアニストの記念すべき初リーダー作。バンド全体を自在にコントロールし、全プレイヤーで繊細な空間を描く彼の作家性が遺憾無く発揮されている名作だ。後に発表される『The Individualism of Gil Evans』(1964)などでは彼の作家性がさらに深化した姿を味わうことが出来るが、聴きやすさで軍配が上がるのはやはり初期かな。
99. Opus Avantra - Introspezione
Release: 1974
Origin: Italy
Label: Artis
Genre: Progressive-Rock
イタリアン・プログレ・シーン至高の名盤。オペラと現代音楽をコンパクトなポップミュージックの形に整えたかのような一枚。この他に類を見ない音楽性を全10曲・40分に収める手腕に凄味を感じる。
98. NORIKIYO - EXIT
Release: 2007
Origin: Japan
Label: KSR
Genre: HIP-HOP
神奈川県相模原市出身ラッパーの1st。一つ一つの言葉選びやフロウ、トラックなどはオーソドックス。本作の真の魅力は表面的な部分ではなく、リリックで描かれる内容とメッセージ性に詰まっているのだ。うだつの上がらねえ生活を悲観せず、時には仲間と騒ぎ、時には気に入らない奴の愚痴を吐きつつ、時には迫ってくるスリルを躱し、終わりなき毎日を泥臭く生き抜く。そんな己の生き様を赤裸々に吐き捨てていく姿が映画の主人公のようで、些細な表現一つ一つに胸を打たれてしまうのだ。そして、本作を一周聴き終えたときは、まるで映画『トレインスポッティング』『ファイト・クラブ』を見終えた後のように、「俺もクソな毎日でも生きてやるか!」とこちらまで元気付けられてしまう。本作はクソったれな毎日を戦う奴ら全員に向けた、最高の人間讃歌なのだ。
「日銭、飯の種 足りねぇんだ万券 MondayからSunday過ぎる 時は金
確かに24 こいつだけは平等 ただ過ごすか、積んでいくかどっち?」
(『23時各駅停車』より)
「BACK'N THA DAYS 思い出す あれからいったいどのくらいの日々が経つ
俺はまだカス いつから社会からはみ出した 古傷が熱ぃんだ痛みが増す」
(『2 FACE feat. BES』より)
本作では良い意味で自分の半径5km圏内の出来事を書き留めたようなリリックばかりだが、次作以降はリリック内で扱われるトピックや視点の幅が拡がり、フロウ・発声などのラップスキル全般も格段に洗練されていく。彼が一人のラッパーとして作品ごとに成長していく様は、「継続は力なり」という言葉を体現しているようでとにかくアツいのだ。本作が気に入った方は、是非彼の作品を時系列順に聴いてみてはいかがだろうか。
97. Gigi Masin & Charles Hayward - Les NouvellesMusiques De Chambre Volume 2
Release: 1989
Origin: Italy/UK
Label: Sub Rosa
Genre: Ambient
全編が牧歌的なメロディーに包まれたアンビエントの名盤。無理に音を敷き詰めないミニマルな造りのおかげで、どのような状況でも耳にスッと入ってきてくれる。今年は生活の中で疲れ果ててしまう機会が多かったが、その度に本作に助けられた気がする。
本作屈指の名曲『Clouds』は『舐達麻 - FLOATIN'』(Prod. GREEN ASSASSIN DOLLAR)で大胆にサンプリングされているので、そちらと聴き比べてみても面白いだろう。
96. Jan Garbarek & Bobo Stenson Quartet - Witchi-Tai-To
(Apple Musicのみコンピ盤に全曲収録)
Release: 1974
Origin: Norway
Label: ECM
Genre: Jazz
ECM Recordsで僕が一番最初に聴いたアルバム。未だにレーベル内では一番お気に入り。
ECM特有のリバーブのかかった音作りや、「北欧のコルトレーン」という異名を持つ名手Jan Garbarek(Sax.)のヒリヒリと震えるようなエモーショナルなプレイングなど、本作を一聴すれば北欧ジャズの個性と魅力が一瞬で引き込まれる。
Release: 1994
Origin: US
Label: Columbia
Genre: HIP-HOP
言わずと知れた90's東海岸ヒップホップ屈指の歴史的名盤。ヒップホップの背景知識が付くほどに、本作で起用されたプロデューサー陣の豪華さに笑えてくる。本作をオーケストラバンドと共に完全再現したライブ盤『Illmatic: Live from the Kennedy Center』もスタジオ盤に匹敵するレベルのとんでもないクオリティなので、未聴の方はそちらも是非。
94. Squarepusher - Ultravisitor
Release: 2004
Origin: UK
Label: Warp
Genre: IDM/Drill 'n' bass
イギリス・チェルムズフォード出身電子音楽家/ベーシストの10thアルバムにして、彼の代表作。彼の個性が一番発揮されているのは、4th『Music Is Rotted One Note』・14th『Shobaleader One: d'Demonstrator(Shobaleader One名義)』など、彼の原点であるジャズ/フュージョンの素養をフルに発揮した作品だと考えているのだが、作品全体の完成度やキャッチー性は本作が飛び抜けているように感じる。名曲『lambic 9 Poetry』『Tetra-Sync』のメロディーは息を飲む美しさ。
93. Emperor - In the Nightside Eclipse
Release: 1994
Origin: Norway
Label: Candlelight
Genre: Black-Metal
ノルウェー出身3人組(制作当時は4人組)ブラックメタルバンドの1stアルバム。
彼等は音楽性の自由度が高い「ブラックメタル」というジャンルの黎明期において、とりわけ構築的なスタイルを追究し、同ジャンルの進化に大きく貢献したバンドだ。バンドそのものはアルバム4作品を遺して短命に終わってしまうものの、中心人物Ihsahnをはじめとする各メンバーの活動も精力的であり、後続のメタル・シーン全体への影響力は計り知れないものがある。
本作は2nd『Anthems to the Welkin at Dusk』以降と比べて荒削りな箇所が随分と多い、良くも悪くも初期衝動溢れる作品に仕上がっている。しかし、本作の時点でバンドの核Ihsahn(Gt./Vo.)が仕組んだと思われる非凡なアイディアだらけ。そこにアングラ臭満載のシャリシャリモクモクとした低音質(ブラックメタル基準でいえば高音質)なプロダクションが見事に組み合わさることで、得体の知れない神秘的なサウンドが生じているのだ。
次作以降、バンドはIhsahn(Gt./Vo.)のクラシカルな音楽素養によって、より多層的で洗練された音像へと進化の路を辿るが、その反面、緻密な曲構成となるあまり、作品は徐々に難解なものとなっていく。そのため、ある種ではバンド史上最もストレートな作品として、1stである本作を最高傑作として挙げるファンも多い。彼等のアルバム4作品はどれも甲乙付け難い傑作だが、一番入門に向いた作品は本作で間違いないだろう。是非、本作から時系列順に彼等の歴史を追ってほしい。
ちなみに、本作の邦題は『闇の皇帝』。日本版をリリースしたトイズ・ファクトリーのセンスに脱帽。
92. Nivhek - After its own death / Walking in a spiral towards the house
Release: 2019
Origin: US
Label: (self-released)
Genre: Ambient
アメリカ・オレゴン州出身電子音楽家の1stアルバム。とはいっても、彼女は“Grouper”名義で既に11枚のソロアルバムをリリースしているため、実質的に本作は12番目の作品となる。聖歌隊の声とビブラフォンが薄いノイズの膜の向こう側で鳴り響くのを聴いていると、空虚な宇宙空間へと一人で投げ出されたような気分になる。
91. The Cure - Disintegration
Release: 1989
Origin: UK
Label: Fiction
Genre: New-Wave/Gothic-Rock
90. SEEDA - 花と雨
Release: 2006
Origin: Japan
Label: KSR
Genre: HIP-HOP
00's日本語ラップ・シーン屈指の名盤。過去や現在感じている生活の苦痛やしがらみ、街の魅力や居心地の悪さ、その街で出会った恩人やいけすかない奴等、愛する者との別れ、未来への微かな希望、それら全ての経験を壮大なドラマへと昇華した映画的な構成の妙に唸らされる。彼のラップはテクニック面でもシーン随一の切れ味だが、それ以上にユーモアと切実さのバランス感覚が唯一無二だと思う。重いトピックをヘラヘラ笑いながら威勢良くラップする彼のたくましさに、こちらまで勇気を貰ってしまうのだ。
89. Choir Of Saint-Pierre-Aux-Liens De Bulle, Berne Symphony Orchestra/ Michel Corboz - Fauré: Requiem
Release: 1972
Origin: France
Label: Etaro
Genre: Classical
88. Death Cab For Cutie - Transatlanticism
Release: 2003
Origin: US
Label: Barsuk
Genre: Indie-Rock
美メロまみれの46分間。
87. Mike Oldfield - Incantations
Release: 1978
Origin: UK
Label: Virgin
Genre: Progressive-Rock/Minimalism/New-Age
映画『エクソシスト』のメインテーマでお馴染みの作曲家/マルチプレイヤーによる4th。多重録音を駆使することでニューエイジにも通じる壮大で牧歌的な世界観を生み出す手法は、初期3作と同様。しかし、本作の曲構成はやけにミニマル・ミュージック的であり、以前までとは似て異なる音像を披露してくれる。
一人の男によって緻密にコントロールされた、無数の楽器やコーラスの反復を聴いていると、まるで巨大な建造物を眺めているような感覚になる。
Release: 2003
Origin: Japan
Label: Victor
Genre: J-POP/Indie-Rock
歌手・声優・女優などの多分野で活躍を続けるソロアーティストの4thアルバム。坂本真綾とプロデューサー菅野よう子がタッグを組んだ最後のアルバムにして、デビュー当時から続く二人の共同体制の到達点。フォーク/民族音楽/ポストロック/エモ/クラシック音楽などをミクスチュアしたUSインディーロックにも通じる音楽性と、その時々の風景・心象を切り取って綴ったような感覚志向の歌詞がベストマッチ。1曲目…2曲目…と進む毎に言葉と音が連想ゲーム的に繋がり、抽象性を保ったまま世界観が拡がっていく。
ノスタルジックなメロディーが満載のポップソング集としても、坂本真綾のリリシズムが遺憾なく発揮されたコンセプチュアルな作品としても楽しめる一枚。
85. Flower Travellin' Band - Satori
Release: 1971
Origin: Japan
Label: Atlantic/GRT
Genre: Hard-Rock/Progressive-Rock
「日本のロックの名盤」を尋ねられると、毎回本作が真っ先に思い浮かぶ。Black Sabbathに東洋的なメロディー感をそのまんまねじ込んだ、さながらB級ホラーな世界観が何とも愛くるしい。
84. Kendrick Lamar - To Pimp A Butterfly
Release: 2015
Origin: US
Label: Top Dawg/Aftermath
Genre: HIP-HOP/Jazz-Hop
83. envy - 君の靴と未来
Release: 2001
Origin: Japan
Label: H.G. Fact
Genre: Hardcore-Punk/激情系/Post-Rock
名曲『Left Hand』の歌詞に何度も救われてきた。
「耳障りな音を武器に 睨む目は睨み返し ただ何もなく 少しの変化が来るだけ」
「呪縛を解き放て」(『Left Hand』より)
82. Yes - Relayer
Release: 1974
Origin: UK
Label: Atlantic
Genre: Progressive-Rock
メンバーチェンジの影響により、彼等にしては比較的無機質でテクニカルな作風となった一作。ブレーキが外れたような怒涛の演奏ぶりの中から、人懐っこいメロディーセンスが時々ひょっこり顔を出すバランス感覚が良い。
81. Charles Mingus - Blues & Roots
Release: 1960
Origin: US
Label: Atlantic
Genre: Jazz/Hard-bop
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