カヤマのブログ

【No.21〜40】カヤマ・2022年遭遇作品100(新〜旧作 音楽/映画/書籍etc...)

21. Dennis Russell Davies, Margaret Leng Tan & American Composers Orchestra - Cage: The Seasons

Cage: The Seasons

Cage: The Seasons

  • アメリカン・コンポーザーズ・オーケストラ, デニス・ラッセル・デイヴィス & マーガレット・レン・タン(トイ・ピアノ、メロディカ、パーカッション、ホイッスル
  • クラシック
  • ¥1630

Release: 2000

Origin: US/Singapore

Label: ECM

浅田彰からの影響もあり、今年はジョン・ケージの楽曲をそれなりの数聴いた。その中でもこれが一番気に入った。彼の創る音楽は穏やかな狂気を孕んでいる。管楽器の嫋やかな音色が癒しをもたらしてくれたかと思えば、他楽器が加わることで不協和音を孕んでゆき、神経症的に鳴り響く弦楽器とピアノが突如首筋に迫る。音数の絞られた静謐な全体像をしていながらも、息もつかせぬほどのスリリングさ。再生中は辺りの空間が掌握されてしまい、目が冴え、思わず背筋もピンとする。読書中にかなりヘビロテしました。

 

22. Dorian Concept - What We Do for Others

What We Do for Others

What We Do for Others

  • Dorian Concept
  • エレクトロニック
  • ¥1528

Release: 2022

Origin: Austria

Label: Brainfeeder

彼は技巧派DJとして名を馳せているが、トラックメイカーとしても才気煥発な音源をリリースし続けているのだからニクいね。ジャズ由来の有機性を伴ってムニョムニョと揺れ動くビート・ミュージック。無邪気に響くクワイア(合唱)とシンセのポロポロとした音色によってメロディアスに味付けされており、過去一に間口の広い作風だ。Brainfeederファンにも「Brainfeeder?何それ?」という方々にも、ちょっぴりひねりの効いたボーカル・アルバムとして強く推薦できる一作です。ところで、あまりにイメージがピッタリなんで、言っちゃってもいいですかね?「おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンド」って!!!!!(ドン!)

 

23. エリック・ロメール - レネットとミラベル/四つの冒険

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Release: 1987

Origin: France

緑・白を基調にした田舎~パリの街と、いつもどおりのピカピカの陽光。一見してすこやかな景色。しかし目を凝らしてほしい、執拗なまである色彩設計に。主人公への視点誘導として必ず「赤」が差し色として着いて回るし、レネットとミラベルにとっての未知の存在は必ず「青」い。SEの数々(特に前半2編の田舎では)も素朴で、尚且つ饒舌すぎるほどにリズミカル。フィールド・レコーディングもののアンビエント・ミュージックを彷彿とさせる。(なんなら映画の音だけCDで欲しいくらいだ)終盤の正義についての議論も興味深い。

ミラベルの都会的ファッションセンスに見惚れる方は多いようだけど、僕はレネットの方ばかりを観ていた。ふわふわのスカート、赤くてモフモフのカーディガン、だいすきだ……。

 

24. 江藤淳 - 成熟と喪失: 母の崩壊

Release: 1967

Origin: Japan

Label: 河出書房

国内現代文学4作品のなかに、日本という国家における「母」の喪失を見出す。今日でいう「セカイ系」論にも接続可能な内容であり、まだまだ後続世代が議論の続きをあれこれ加筆できそう(たとえば宇野常寛がまさに今日その役を担っている)。終盤の『遠藤周作 - 沈黙』論はまさに目から鱗でした。それにしても、本書全体を貫くこの筆跡はなんだろう。作品を逐一引用して粘り強く論展開をしているはずなのに、マグマのように溢れ出す江藤淳御本人の情念(?)。これは批評?私小説?素朴に僕もこんな熱量で文章を書けるようになりたいとおもった。

 

25. Fu Manchu - Eatin' Dust

Release: 1999

Origin: US

Label: Man's Ruin

ファズでぶっつぶれたギター・ベースサウンドとドタバタとやかましいドラム・セクション、そしてガンジャの過剰摂取がもたらしたのであろうダラシネェ腑抜けきった歌声。「ストーナー・ロック」「デザート・ロック」なる立派な字名もあるらしいが、そんなことはどうでもよろしい。要はアメリカ西海岸のロクデナシ・ブルースってこった。

彼等の特徴をKyuss・Bongzilla・Melvins等、同ジャンルの盟友とあえて比較してみるならば、ブルージーな陶酔感が浅くパンキッシュで抜けのいい疾走感をまとった、ゴキゲンなヴァイブスにある。MVの性質もそれを雄弁に語ってくれる。密室でのストーンではなく、ジョイント片手に4WDをかっとばすためのBGMだ。

 

26. FUGAZI - 13 Songs

Release: 1989

Origin: US

Label: Dischord

音楽的にポストロックに接近した後期のほうが断然良いだろうと思っていたのが、考えを改めた。シンガロングが掛け合わされることによって初めて完成する、観客もろとも巻き込む共同体の音楽。ゆえに彼等は「ストレート・エッジ」の価値観を流布させた伝説として今日まで語られることになるのだ。

今年は「文化と社会」というテーマについてウジウジ悩むことが多かったのだが、その答えのひとつが彼等の中に眠っている気がする。

 

27. 福間洸太朗 - 武満 徹:ピアノ作品集

Toru Takemistu Complete Piano Works

Toru Takemistu Complete Piano Works

  • 福間洸太朗
  • クラシック
  • ¥917

Release: 2007

Origin: Japan

Label: Naxos

僕にとって武満徹といえば『ノヴェンバー・ステップス』や『大島渚 - 儀式』劇判であり、おどろおどろしい曲を書く作曲家として記憶していた。しかし、こんな綺麗な曲も書く人だったのだな。チルアウト・ミュージックとして愛聴しました。

 

28. フョードル・ドストエフスキー - 罪と罰

Release: 1866/1999

Origin: Russia

Label: 岩波文庫

僕が急に読書をはじめたのも本作が直接的なきっかけだ。一昨年・昨年は人生ではじめて映画を人並みに観る期間だったのだが、それを経て「ドストエフスキーチェーホフからは最終的には逃げようないじゃん!」と、古典からの逃亡をついに諦めたのである(彼がいなければ黒澤明ブレッソンの存在は無かったろう)。なので、半ば義務的に本書を購入し、じっさい序盤150頁程度はかなり難儀したのだが、それ以降は刺激的な読書体験だった。来年中に『カラマーゾフの兄弟』『悪霊』も読むつもりだ。あと、ロシア文学者繋がりでいうなら、トルストイとソルジェーツィン、ソローキン、『ドストエフスキー詩学』も。

 

29. ジョージ・オーウェル - 一九八四年

Release: 1949/2009

Origin: UK

Label: ハヤカワepi文庫

ディストピアというキーワードの象徴たる一冊。本編はもちろん、附録のニュースピーク辞典が強烈。大衆の言語運用能力の低下をうながすことが最良の支配の手段であると示唆する。それよりもさらに恐ろしいのは、登場する食事がいずれも清々しいまでにクソまずそうことだ!食文化って、あらゆるカルチャーの最後の砦だね。

 

30. ジル・ドゥルーズ + フェリックス・ガタリ - アンチ・オイディプス -資本主義と分裂症-

Release: 1972/2006

Origin: France

Label: 河出文庫

題名通りの論旨を固有名詞を入れ替えながら執拗に反復することで、広範な論点を巻き込み、あらゆる構造を否定しながら膨張していく、ひとつの巨大竜巻みたいな書物。筆者は無学なために本書をアフォリズム集としてしか読めず、解説書を経由してかろうじて5%くらい理解が及んだという酷い有様なのだが、たとえそのレベルであろうとも通読すれば露骨に影響を受ける。

ちなみに『ジル・ドゥルーズ - シネマ』も全頁に目を通したが、何も頭に残らなかったことを申し添えておく。(初心者が集まって勉強会とかしてもいいかもね)

 

31. Greyhaven - Empty Black

Empty Black

Empty Black

  • Greyhaven
  • ハードロック
  • ¥1528

Release: 2018

Origin: US

Label: Equal Vision

00年代の再来とは、つまり何を意味するか。Converge・TDEP・Sikth・envy・melt-banana・Shai Huludなど、各々の独創性をもって「ハードコア・パンク」の表現を拡張みせるクソおもしれー奴等がふたたび現れるってことに決まってんだろうが!

同ジャンルのニューカマーたる彼等のサウンドは、とても伸縮自在だ。いわゆるカオティック・ハードコア/マスコアを経由した、すさまじい音数をひょいと処理してみせるテクニカルさが大前提として備わっているが、それに埋没してしまうほど生真面目じゃあない。エモを思わせるキャッチー性が前景化したり、サザン・ロック調のフレーズが有機的な趣を演出したりと、リスナーを次々翻弄してくれるのだ。

 

32. 蓮實重彦 - 映像の詩学

Release: 1979

Origin: Japan

Label: ちくま学芸文庫

本邦の映画批評にパラダイムを起こした最重要書でありながら、新品や電子書籍で容易に入手できない不遇におかれている一冊。(僕はブックオフ・オンラインで購入した。増刷・電子化求む!)本書を前にした者は皆、画面を凝視せよという叱責にもれなく口を噤ませることになる。なので批評文それ自体に関する論評は差し控えたい。

それよりも一端のスマホネイティヴ世代として、本書といかなる態度で対峙すべきかを難儀しているのだ。『ハリウッド映画史講義』でも言及されているが、TVという新興メディアによって映画人口は四八年からすでに減少傾向にあったと。それに加え、VHS・LD・DVD等記録メディアの登場も作品体験を根幹から覆してしまっただろう。むろん彼もそれは織り込み済みであり、映画崩壊が進行する最中で箍が外れぬよう抗い続けた。

今年にはライフワークたる『ジョン・フォード論』が上梓され、長きにわたる本邦の映画批評もとりあえずの完結を迎えた。しかし、これで「蓮實重彦」の言説は有効性を失ったのだと断ずるのは早計に過ぎる。現在も映画は危篤の状態であるし、それは明日もさして変わらない。生涯「映画崩壊」の過程に寄り添い続けた者による思索の跡は、21世紀を生き永らえる助けになるのではなかろうか。

 

33. 蓮實重彦 - ハリウッド映画史講義 翳りの歴史のために

Release: 1993

Origin: Japan

Label: ちくま学芸文庫

語られる内容もむろん非常に勉強になるのだが、それ以上に「歴史を語る」行為につきまとう恣意性について再考するキッカケとなった。ヘイズコード(表現規制)こそが表現に緊張感をもたらし、オルドリッチが陰で暗躍しつづける。ポロリとこぼれる作家評も一々刺激的だ。

「陶酔へと誘うものではなく、たえざる覚醒へと導く不幸な対象としての映画。人びとは、五〇年代作家たちとともに、映画には歴史があり、また歴史が映画をつくるというごく当たり前の事実を身をもって学んだのである。そのことに自覚的たりうるものだけが、なお映画を撮り、なお映画を見ることが許されている。」

「映画は単純なものだし、それを撮る作業もまた単純なものだとゴダールはいう。」

オーソン・ウェルズゴダールを、芸術的な「A級」作家に分類しようとする悪しき陰謀には、徹底して抗戦しなければならない。それと同時に、「絢爛豪華」なハリウッドに対して、「貧窮通り」ばかりを擁護することも慎まねばなるまい。「A級」と「B級」の区別が曖昧に消滅したとき、映画は、ハリウッドの撮影所システムの崩壊を代償にして第二の生を生き始めたのであり、その現実に意識的なものだけのために、映画は存在し続けているからである。」

「多くのひとにとって、オーソン・ウェルズは、メディアとしての映画の枠組みを崩壊させかねぬ存在と映ったのである。」

「七〇年代以後のアメリカ映画は、瞳を抑圧していた修辞学的イデオロギーから解放され、「見世物」にふさわしくイメージをスペクタクル化することで、物語の簡潔さを抹殺することになる。」

 

34. Help Me Plyz - Help Me Plyz

Help Me Plyz

Help Me Plyz

  • Help Me Plyz
  • ロック
  • ¥1833

Release: 2021

Origin: Japan

Label: -

Machine Gun Kelly・Lil Lotus・Trippie Reddなどのラッパーが現在のロック・シーンを牽引しているのは御周知の通りであるが、本邦でも同様のムーヴメントがひそかに進行しているようだ。ジャパニーズ・エモラッパーTYOSiN率いるポスト・ハードコア・バンド。音楽性はオーソドックスなキャッチー性を大事にしている印象だが、ボーカリストがラッパー出身ということもあり、フローにその名残りが見られる。純粋なラウドロック・シーン出身者からは生まれないであろう歌いぶり、その差異がおもしろいのだ。

 

35. 保坂和志 - 書きあぐねている人のための小説入門

Release: 2003

Origin: Japan

Label: 中公文庫

今年の僕は、読書の心得をすべて彼に学んだといっても過言じゃない。登場人物の視線、つまり各々の身体感覚の集積物として本を読むという姿勢。「なーんだ、音楽や映画と同様の楽しみかたでよいのか!」と、心の枷がひとつ外れた気がした。

「小説というのは本質的に「読む時間」、現在進行形の「読む時間」の中にしかないというのが私の小説観であって、テーマというのは読み終わったあとに便宜的に整理する作品の一側面にすぎない。」

「文体というと、言葉づかいが硬いとか柔らかいとか、センテンスが短くきびきびしているとか、ダラダラと長く続いているとかいう違いのように思われがちだが、これはあまりにも表面的、即物的な見方で、それを文体というのなら、誰でもテクニックさえ磨けば、「いい文体」「味のある文体」が書ける。しかし、それは花そのものではなく花の絵を見て花を描くという子どもの絵の域を出ない。」

 

36. 保坂和志 - 小説の自由

Release: 2005

Origin: Japan

Label: 中公文庫

『書きあぐねている人のための小説入門』が理論編であるとしたら、本書は実践編。読んで、書きながら、考える、その一部始終。連載の書籍化という制作方法が巧く染み出しており、著者が実生活を送りながら毎日徐々に思考を進めていく過程がパッケージングされている。何でも一朝一夕で片付くものはなく、堆積させていくことが大切なのだなと素朴に感じた。今年は彼の風景論にほんとうに影響を受けたね。

 

37. フー・ボー - 象は静かに座っている

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08KM3PGYP/ref=atv_dp_share_cu_r

Release: 2018

Origin: China

タル・ベーラ監督に師事していたフー・ボー監督による最初で最後の長編映画作品ということで、本作の存在を知った一年程前から覚悟はしていたものの、いざ眼前にしてみるとその規格外のクオリティに圧倒されると同時に、監督の不在が惜しくて仕方がなくなる。

タル・ベーラ監督に通じる箇所といえば、長回し主体の空虚な時間感覚と貧困層の愚かしさを真正面から捉えるシビアなリアリズム。対して、タル・ベーラ監督と決定的に異なるのは、風景には目もくれず人間の背後を幽霊のように追い回すカメラアングルと、ポストロック/エモ系の麗らかなメロディーを奏でる劇伴。29歳の若さでは信じ難いシネフィル的構築力と、29歳の若さ相応の青臭さが矛盾せず高次元に絡み合ってしまっている。

「この世界 ヘドが出る」と吐き捨てながらも選んでみせた、なけなしの金をベットした最後の賭けは一体、「希望」以外のなんだったろう。人生というものについて、監督の中で既に答えは出ていた。なのに、撮り終えて間もなく彼が旅立ってしまうとは……。つくづく、この世の非情を恨む。

 

38. 今石洋之 - サイバーパンク・エッジランナーズ

Release: 2022

Origin: Japan

Label: TRIGGER

今季は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』『チェンソーマン』など、アニメ業界全体の転換点となりえる作品が同時放送されている、俗にいう「豊作」状態であるが、そのなかでも本作はズバ抜けて突出している。紹介してくれた友人が「国産アニメのエポック・メイキング」と喧伝していて、その際は「マジかよ主語デカくね?」と勘ぐってしまったが、まったくもって事実であった。これはやばすぎる。

アジア圏の格差社会を戯画化した「サイバーパンク」の概念に、かつて『AKIRA』『攻殻機動隊』が応答し、そのフォロワーである『マトリックス』の主人公役:キアヌ・リーブスが登場するポーランド産ゲーム『サイバーパンク2077』を、日本のアニメ会社が映像化するという、歪な文化的キャッチ・ボールに製作者は自覚的であり、その経緯がすべて魅力へと丁寧に還元されている。

スパイダーマン・スパイダーバース』の革新性を踏まえたうえで日本産手描きアニメの方法論で応答し返す、平面性をフィーチャーしたデザイン。海外資本(Netflix)であるがゆえのタランティーノエドガー・ライトにも通ずるDJ的劇判遣い。単体のアニメ作品としてはもちろん、『キルラキル』『ニンジャスレイヤー』『プロメア』を経た株式会社TRIGGERの集大成としても素晴らしい。

 

39. イングマール・ベルイマン - 第七の封印

Release: 1957

Origin: Sweden

神は沈黙を貫くが、「死」は僕らに対して分け隔てなく応えてくれる。結構気まぐれなヤツだけどね。敬虔な聖職者にも、下劣な棄教者にも、純心な者にも、浮気者にも。その事実を肯定も否定もせず、牧歌的な陽の光や潮の流れで包み込み、あるがまま喜劇に昇華してしまう。死神のヴィジュアルを定義した功績は素より、イングマール・ベルイマン監督の思想性が最も鮮明な形で刻印されているという意味でも突出した一作だ。

「死」を描いた傑作と云われると身構えてしまうのが世の常であるが、そう固くならなくても大丈夫。これは決して絶望ではないから。

 

40. 石原立也 - 響け!ユーフォニアム2

Release: 2016

Origin: Japan

Label: 京都アニメーション

京都アニメーションという制作会社において、山田尚子監督は『けいおん!』、武本康弘監督は『らき☆すた』、そして石原立也監督は『日常』『中二病でも恋がしたい!』という「日常系アニメ」のメルクマールを発表し、その以降、3人の作家は「日常」という自ら築いた理想郷に亀裂を加えてみせようと執心するようになる。理想郷からリアリズムへの跳躍。近年の映画業界での大健闘と作風の変遷は、決して無関係ではないはずだ。

部活動という共同体の脆さと、それゆえに強調されるバンド・アンサンブルの敬虔さ、という基本テーマは依然一貫している。しかし、同年代間のわだかまりよりも、親~教員や姉妹の確執にフォーカスする本シーズンは、映画『ブレックファスト・クラブ』『牯嶺街少年殺人事件』などとも通じる、普遍的な青春群像劇としての輪郭を色濃くする。すべての子供たちは悉に囚われの身なのだ。

そして、「高坂麗奈」の存在を原動力に駆動する物語であるという点も一貫している。これこそがアニメ的表現なのか、いや、蛮勇な者が環境を掌握するのは現実世界でも同じだっけ?と、鑑賞者の第四の壁をぐらつかせる。彼女がそこに存在する限り、すべてが白昼夢の出来事になる。「アニメのリアリズムって不思議だな」と心底思う。

……で、結局、どの娘が推しかって?川島緑輝(かわしま さふぁいあ)ちゃん。

 

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