カヤマのブログ

【20〜1位】カヤマ・音楽アルバム100選(ver.4.0)

20. Wayne Shorter - Juju

Release: 1965

Origin: US

Label: Blue Note

Genre: Post-Bop

 


19. Miles Davis - Birth of the Cool

Release: 1957

Origin: US

Label: Capitol

Genre: Cool-Jazz

『Get Up With It』『In a Silent Way』『Kind of Blue』『Nefertiti』派を経て、本作に着地してしまった。

 


18. King Crimson - Lizard

Release: 1970

Origin: UK

Label: Island/Atlantic

Genre: Progressive-Rock

つい去年まで、5th『太陽と戦慄(原題:Larks' Tongues in Aspic)』をオールタイム・ベスト・アルバムとして迷わず挙げてしまうくらいにはメタル期クリムゾンを特別視していたのだが、急に気が変わってしまった。現在は3枚目のアルバムである本作が一番のフェイバリット。

「再生中は心地良い酩酊感を得られるが、次の朝には毎回内容を忘れるアルバム」という素朴ながら不敬極まりない感想を抱いていたのだが、再鑑賞してみて強ち間違いでもなかったと気づく。掴み所がなさ過ぎる。それも逸らしている、意図的に。

楽曲の基板にあるのは牧歌的でとぼけたメロディセンスの歌モノロックだ。しかし、どの曲においても圧の強いメロトロンと各パートのインプロヴィゼーションが突如無機的な響きを齎し、暖かいサウンドスケープがボロボロと崩れていく。平常な精神を徐々に前後不覚の状態へ陥れようと手招きする。やはり即効性は薄いが、慣れてくれば捻れた音楽性の虜になってしまう一枚。本作に″名盤″だとか″傑作″という言葉は似合わない。静かな狂気を孕んだ″怪作″の類だ。

 


17. Son Lux - Tomorrows III

Release: 2021

Origin: US

Label: City Slang

Genre: Experimental-Rock/Post-Rock

各メンバーがソロ活動で現代音楽/映画音楽/現代ジャズ/エクスペリメンタルなどの幅広いジャンルの作品を発表してきた上で、最終的に「バンド・ミュージック」という表現方法を選んだという、その事実が感動的で仕方がない。2020~2021年に発表された3部作『Tomorrows』シリーズのエンディングとなる本作は、ある種70年代プログレッシヴ・ロックにも似たバイブスを纏った、どこまでも膨張せんとする有機的エネルギーの塊だ。ギターとストリングスの弦楽器のコントラスト、強靭にうねるレイド・バック・ビートとパーカッシヴにバラ撒かれるフィル、高く伸びるファルセットとが大量の音粒となって降り注ぐ。

「2021年ベスト」を断言できるほど今年の音楽は聴けていないけれども、本作と『Kanye West - Donda』はブッチギリで衝撃的でした。どう考えても2010年代以前では有り得ない表現の連続。

 


16. Jóhann Jóhannsson - Orphée

Orphée

Orphée

Release: 2016

Origin: Iceland

Label: Deutsche Grammophon

Genre: Neo-Classical

僕は去年の3月くらいまで実写映画に一切興味の無い人間で、それからの1年9ヶ月は遅れを取り戻すかのように有名作を見漁っている。そこでようやく、以前まで「ポスト・クラシカル系アーティストの一角」とか認識していなかった彼の真価を身を持って体感した。御存命の内に気づきたかったものだ……。

ポスト・クラシカル系は楽理を真剣に学んでいる方や、レフトフィールドな現代音楽・電子音楽を日々追いかけるディガーからは嘲笑の的となっている印象だが、僕はそれに反論する知識も意志も無く、むしろカジュアルに簡略化されたエモさを追究したような俗っぽさを愛してしまう。

因みに、ドゥニ・ヴィルヌーヴ×ヨハン・ヨハンソンのコラボ作で一番好きなのは『プリズナーズ』。

 


15. Gastr Del Sol - Upgrade & Afterlife

Upgrade & Afterlife

Upgrade & Afterlife

Release: 1996

Origin: US

Label: Drag City

Genre: Post-Rock/Ambient/Folk

本企画の皆勤賞。出会って数年経つが、未だにこの音像を言語化する術を持てないままでいる。ポストロックという固有名詞が存在しない頃に本作が「アンビエント・テクノ・フォーク」と呼ばれていたこと……前2作でのフォーク/ハードコア・パンク/ノイズを正面衝突させた異形のギターミュージックからさらに進歩し、静謐なピアノをあしらった室内楽/映画音楽的アプローチが増えたこと……本ユニットでの音響実験はこれでやり尽くしたと判断したのか、次作『Camoufleur』では普遍的な歌モノポップスへの急接近を試みたこと……それくらいは辛うじて口にすることができる。が、どれも背景知識の羅列に留まり、本作を称する言葉を見つけることは一向に叶わない。

アメリカに根付いた幾つかの音楽ジャンルを統合したメルクマールでありながら、気負った力みやスノビズムの類とも距離を取り、実に素朴なメロディーを紡いでゆく。ややこしい言葉を精一杯並べてはみたが、未聴の方に向けるならばいっそ、「アコギとノイズが超絶綺麗な音楽なんだよ!」と端的に薦めてしまっても良いかも知れない。

 


14. 近藤等則 - Metalanguage Festival Of Improvised Music 1980 - Volume 2: The Science Set

The Science Set

The Science Set

Release: 1981

Origin: US/UK/Japan

Label: Metalanguage/The Beak Doctor

Genre: Free-Improvisation

 


13. 舐達麻 - GODBREATH BUDDHACESS

GODBREATH BUDDHACESS

GODBREATH BUDDHACESS

  • 舐達麻
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2444

Release: 2019

Origin: Japan

Label: APHRODITE GANG HOLDINGS

Genre: HIP-HOP

ハスリング・ラップとLo-Fi HIP-HOPの交点として今尚唯一無二のポジションを護り続けている一枚。彼等に出会ったばかりの頃はBADSAIKUSHのぶっきらぼうな高速フローが衝撃的だったが、最近はDELTA9KIDの叙情的な言葉選びがやけに沁みる。

GREEN ASSASSIN DOLLAR・7SEEDSによるトラックはノスタルジックな旋律を撒き散らせながら低音が緩やかに撓み、傷付いた心身を優しく揺らしてくれる。ストレスに苛まれるたびに心の拠り所として延々リピートしてました。

 


12. Thomas Demenga - J.S.Bach: Suiten für Violoncello

J.S. Bach: Suiten für Violoncello

J.S. Bach: Suiten für Violoncello

  • トマス・デメンガ
  • クラシック
  • ¥2648

Release: 2017

Origin: Switzerland

Label: ECM

Genre: Classical

 


11. Peter Brotzmann, 羽野昌二 & 灰野敬二 - 影

Release: 2000

Origin: Japan/German

Label: DIW

Genre: Free-Jazz/Free-Improvisation

こんなにおっかない音楽作品は他に無いと思ってる。灰野敬二のブルースやクラシックロックを曲解したおどろおどろしいパフォーマンスと、Peter Brotzmannの金属的に拉げた音色が交錯する、怒涛のインプロヴィゼーション・ライブの一部始終。ギターとサックスの無機的な不協和音に羽野昌二のドラミングや灰野敬二の声が投げ込まれ、バンド・アンサンブルが肉体性を獲得していく様は、さながら廃工場に幽霊が具現化する瞬間の恐怖感。

 


10. Derek Bailey - Music Improvisation Company

The Music Improvisation Company

The Music Improvisation Company

Release: 1970

Origin: UK

Label: ECM

Genre: Free-Jazz

 


9. ATARI TEENAGE RIOT - 60 Second Wipe Out

60 Second Wipe Out

60 Second Wipe Out

Release: 1999

Origin: German

Label: Digital Hardcore

Genre: Digital-Hardcore

 


8. John Coltrane - Ascension

Release: 1965

Origin: US

Label: Impulse!

Genre: Free-Jazz

 


7. Jan Jelinek - Loop-finding-jazz-records

Loop-Finding-Jazz-Records

Loop-Finding-Jazz-Records

Release: 2001

Origin: German

Label: faitiche

Genre: Ambient/Clic-House/Glitch

 


6. Carolin Widmann & Dénes Várjon - Schumann: The Violin Sonatas

Schumann: The Violin Sonatas

Schumann: The Violin Sonatas

  • Carolin Widmann & デーネシュ・ヴァールヨン
  • クラシック
  • ¥1630

Release: 2008

Origin: German/Hungary

Label: ECM

Genre: Classical

 


5. J Dilla - Donuts

Donuts

Donuts

  • J Dilla
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1833

Release: 2006

Origin: US

Label: Stones Throw

Genre: HIP-HOP/Instrumental-HIP-HOP

ヒップホップのビートメイキングにおける不動のバイブル。現代ブーンバップを軽く追っている限りでは、彼の影響力は衰えるどころか未だに価値基準の中核を担っているように思える。まだ全然「現代」のビートだよね。今年翻訳されたばかりの『J・ディラと《ドーナツ》のビート革命/著: ジョーダン・ファーガソン・訳: 吉田雅史』も早く読まなきゃなぁ。

 


4. 高柳昌行 - イナニメイト・ネイチャー

Release: 1990

Origin: Japan

Label: JINYA DISC

Genre: Noise/Free-Improvisation

『日本フリージャズ史(著:副島輝人)』のおかげでようやく聴き方を心得た一枚。よくよく耳を澄ましてみればその音響は艶やかであり、「メロディアス」とすら感じさせるほどだ。初鑑賞時は「ノイズ=無機質」という短絡的な認識しか持てなかったが、とんでもない。生命力に満ち溢れた轟音のシンフォニーだ。

 


3. Arvo Pärt  - Kanon Pokajanen

Pärt: Kanon Pokajanen

Pärt: Kanon Pokajanen

  • Estonian Philharmonic Chamber Choir & トヌ・カリユステ
  • クラシック
  • ¥2546

Release: 1998

Origin: Estonia

Label: ECM

Genre: Classical

 


2. Misery Signals - Of Malice And The Magnum Heart

Of Malice and the Magnum Heart

Of Malice and the Magnum Heart

  • Misery Signals
  • ロック
  • ¥1630

Release: 2004

Origin: US

Label: Ferret

Genre: Metalcore/Post-Rock

息もつかせぬ程の奇跡の連続。これを「如何にも00年代らしい若手ハードコア/メタルコア・バンドのデビューアルバム」と片付けてしまうのは容易だ。しかし、なら何故僕は本作を超えるメタル・アルバムと5年もの間出会えていないんだ?

本作の傑作性をそれらしく書くことはできる。前身バンド7 Angels 7 Plaguesの多層的な曲構成とCompromiseのメタリックな疾走感の折衷であるとか、歌詞においても前身バンドを襲った悲劇を表現へと昇華しているだとか、さらにはプロデューサー: Devin Townsendの十八番である堅牢なリズムワークや映画的アルバム構成まで巧みに咀嚼しているだとか、その結果生まれた硬質な攻撃性と叙情美が共存するサウンドは「叙情系ハードコア」「メタルコア」というジャンルにおけるメルクマールとなったとか。

しかし、現在の僕には本作の魅力を純度100%で伝えるだけの文筆の技量はない。だからせめて、注目すべき数曲をピックアップして紹介していこう。


3曲目『The Year Summer Ended In June』

初期の彼等を象徴する一曲。EP『Misery Signals』からの再レコーディングであり、またアルバムから唯一MVが制作された曲でもある。つまるところ、これを聴いてピンと来ないのであれば、本作は"not for you"ということだ。本MVは原曲の一部をカットしているため、ご興味のある方は是非アルバム・初期EPバージョンにも触れてみてほしい。

彼等に出会ってから擦り切れるほどこの曲を聴いているが、未だに「歪な曲だなぁ」という第一印象は覆らない。つんのめるようなビートを刻むハードコア/メタルコアサウンドにほぼ力業で、青臭く眩しい、聴いてるこっちが赤面してしまうような″泣き″の旋律を捻じ込んでくる。そして最後の1分間にはBPMを落とし、追い打ちをかけるようにもう一度″泣き″の旋律で畳みかけてしまう。やってることは無茶苦茶なのに「この形以外有り得なかった」と納得してしまう、不思議な構成の妙を感じる一曲。


6曲目『Worlds & Dreams』

全編インストのインタールード的小品であるが、上記の曲に次いで本作内でも屈指の人気を誇る名曲。暖かい肌触りのアンビエントから、アコースティック・ギタークリーントーンエレキギターが華やかに空間を彩るポスト・ロックサウンドへと雪崩れ込む。

このバンドの魅力は複雑なヘヴィサウンドのみならず、オーガニックな趣向の楽曲作りも心得ているという二面性にあるのだ。


9曲目『Five Years』

3曲目『The Year Summer Ended In June』が力業の名曲だとするならば、対照的にこの曲は綺麗に研磨され、彼等の構成力がハッキリと現れたハードコア/メタルコア・アンセムだ。凄絶な演奏と美旋律の鬩ぎあいの末に辿り着くフェードアウトの余韻よ……。


彼等は2ndアルバム『Mirrors』以降、シューゲイザー/アンビエント的音響やストリングスの導入などの様々なアプローチによって、硬質なバンド・アンサンブルと有機的な感触の両方を探究してゆく。より広範な音楽要素を秘めた近年の作品も捨てがたいのだが、僕はやはり運命的な巡り合わせが幾つにも重なったこのアルバムが一番だ。

本作にほんの少しでも心惹かれるモノを感じ取った方は、是非時系列毎にアルバムを聴いてみてほしい。大丈夫、これ含めてたった5枚だけさ。

 


1. NORIKIYO - OUTLET BLUES

OUTLET BLUES

OUTLET BLUES

  • NORIKIYO
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2444

Release: 2008

Origin: Japan

Label: EXIT TUNES

Genre: HIP-HOP

 


神奈川県・相模原市を拠点とするヒップホップグループ SD JUNKSTA のリーダーにして、現在も日本語ラップシーン最前線で活躍する男の2ndアルバム。1st『EXIT』から更なる躍進を狙い、全曲BACHLOGIC印の毒々しくギラついたトラックで固められた、なかなかに挑戦的な内容だ。

再生してまず耳に入るのは、トランス・ミュージック調のハイテンションなシンセとNORIKIYOの促音や単語間で軽やかに跳ねるフロー。日本語ラップリスナー以外からは恐らく認識すらされていない人物であろうし、この文章を読んでる貴方も首を傾げているはずだ。本作には「歴史的名盤」「シーンの中心」「完全無欠」、ましてや「オールタイム・ベスト」という賞賛の言葉は似合わない。「じゃあ何故?」と聞かれると、至極単純で恥ずかしいのだけれども、あらゆる音楽作品の中で最も″共感″できる一枚だからだ。僕の理想的な生き方やメンタリティはすべてここに詰まってる。少なくとも、今日時点では。

誰しも最初は「チャラくて軽薄なラップアルバム」という第一印象を抱くだろう。トラックとラップフローのフォルムにのみ着目していればそれも妥当だ。しかし、数回再生してみるか、もしくは歌詞カードを開いてみれば歌詞の"陰り"に気づくはず。取り上げられているトピックはうだつの上がらない生活やディール(取引)の一部始終、警察への懐疑心、ノスタルジーと後悔、それから未来へ向けた諦念混じりの覚悟。上辺はヘラヘラしているようでその実、生活上のあらゆるストレスに疲弊しながらも何とか面白おかしく生きようと藻掻いている。しかし、ブルージーな内容の歌詞とは対照的に、シンセは全曲変わらず煌びやかな音色をイルミネーションの如く拡げていく。その光景が何だか″消費社会″と″労働者″の対比に、つまりは″日本″と″僕たち″を映していると思えて仕方がないのだ。

NORIKIYOは悪趣味に彩られた空虚な街の中で、クソみてぇな出来事に揉まれながらも全部ヘラヘラと笑い飛ばしてみせる。捻くれきった末に360°回転して真っ直ぐ吹っ切れたかのような、ニヒリズムじみたポジティヴさで街を闊歩してみせる。人間って自己否定しながら胸張ることも出来るんだよ。自らの至らない箇所すらユーモアに変えてみせる彼の生き様が、僕には眩しすぎる。これからも背中を追っていきます。

 

「閉じる目 浮かんじゃ消える

  ついた嘘 数見りゃ行き先はHell

  でも笑える ほら笑える

  ほら探せ 何を?それが運命

  ほら探せ(カスも行ける楽園)

  ほら探せ(あのバス停まるバス停)」 

───6曲目『運命 ~SADAME~ feat.般若』より

 

「ドクター ヤクザ ポリになる奴や 職人 リーマン 道は沢山

 どれも安くはねぇはずさ ただSoulだけは売り渡すなよ わかんだろ?

 そうタフに 生きようとする流石のカスへ 飼われてねぇなら振らねぇ尻尾 

 アッカンベーMathafucka!生きるしつこく!」

───10曲目『REASON IS... feat. SEEDA』より

 

「色々覚えた良くも悪くもだろ? 光やらShadowクソな過去

 一歩先の未来の合間を流浪 本当言うと怖ぇんだすごく

 そう、Aloneを癒す歌を もう戻らないその事実を飲み込み

 覚悟に変えたら行こう Walk 路上ならいつもの通り」

───14曲目『BAD & GOOD feat. 仙人掌』より

 

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