カヤマのブログ

【60〜41位】カヤマ・音楽アルバム100選(Ver.4.0)

60. Kristjan Randalu - Absence

Absence

Absence

  • Kristjan Randalu, Ben Monder & Markku Ounaskari
  • ジャズ
  • ¥1324

Release: 2018

Origin: Estonia

Label: ECM

Genre: Jazz

 


59. Pain of Salvation - In The Passing Light of Day

https://music.apple.com/jp/album/in-the-passing-light-of-day/1201580498?at=10l8JW&ct=hatenablog

Release: 2017

Origin: Sweden

Label: InsideOut

Genre: Progressive-Metal

5th『Be』では民族音楽、6th『Scarsick』ではニューメタルやファンク・ロック、7th『Road Salt One』・8th『Road Salt Two』ではクラシック・ロック、9th『Falling Home』ではフォーク・ロックなど、飽くなき音楽探究を続けていた彼等が原点回帰。13年間培ってきたルーツ・ミュージックの有機的な響きを初期の変拍子を駆使したメタルサウンドに練り込み、バンドの集大成ともいえる大作を作り上げた。現代的なヘヴィネスを備えながらも、如何なる瞬間だろうとオーガニックな薫りを決して損なわない。このようなタイプの作品をアメリカ合衆国のバンドではなく、スウェーデンのバンドが発表したという事実も興味深い。

メタル・シーンを出土としながらもジャンル内に留まらない広範な音楽要素を内包し、現在と過去を一直線で繋いでしまう壮大な叙事詩Mastodonの3rdやDeafheavenの2ndなどと並べて、2010年代メタル・シーン最大の傑作として語られるべきだろう。

 


58. nothing,nowhere. - Trauma Factory

Trauma Factory

Trauma Factory

Release: 2021

Origin: US

Label: Fueled by Ramen

Genre: Emo-Rap/Pop-Punk

前作『ruiner』までに漂っていた甘美な閉塞感……具体的に言えばエモラップ特有のギターメロディーと打ち込みビートだけで構築されたチープさ故に愛らしい作風からの脱却。トラックはバンドサウンドを意識した有機的な質感となり、フローもより威勢の良いものに。Machine Gun KellyやTrippie Redd、Lil Lotusなどの後に続き、ラップシーンから「ロックスター」への階段を上り始める決意表明のような一作。

余談だが、本作唯一の客演ナンバー『blood (feat. KennyHoopla & JUDGE)』が甚く気に入って、ネット通話中にしつこく流し続けたら若干怒られた。曲単位でも今年一番ヘビロテしたアルバムのひとつかもしれない。

 


57. Wolfgang Muthspiel - Where the River Goes

Where the River Goes

Where the River Goes

  • ウォルフガング・ムースピール, アンブローズ・アキンムシーレ, ブラッド・メルドー, ラリー・グレナディア & エリック・ハーランド
  • ジャズ
  • ¥2139

Release: 2018

Origin: Australia

Label: ECM

Genre: Jazz

 


56. Slint - Spiderland

Release: 1991

Origin: US

Label: Touch And Go

Genre: Post-Rock/Post-Hardcore

4年前辺りから定期的に聴き返しているが、未だによくわからない。90年代以降のあらゆるロック・ミュージックのプロトタイプとも思えるし、逆に「ハードコア・パンクの派生形」以外に特段の意味合いを持たないプリミティヴな爆音の塊でしかないのかもとも思う。本作に詰まっているのは果たして″1″なのか″100″なのか。

 


55. Hiroshi Yoshimura - Music For Nine Post Cards

Release: 1982

Origin: Japan

Label: Sound Process

Genre: Ambient/New-Age

『Blink』を聴いてると不意に涙が零れそうになる。

 


54. Refused - The Shape of Punk to Come

Release: 1998

Origin: Sweden

Label: Burning Heart

Genre: Hardcore-Punk/Post-Hardcore

ジャズからアンビエント、荘厳なストリングスなどを用いた縦横無尽のアプローチも然る事ながら、何よりも注目すべきは永遠のハードコア・アンセムである6曲目『New Noise』の存在。あのギターリフと"Can I Scream!!"という高らかなスクリームは一聴したら絶対に脳から離れない。

 


53. the GazettE - MASS

MASS

MASS

Release: 2021

Origin: Japan

Label: Sony Japan/JPU

Genre: V-ROCK/Nu-Metal

持ち前のV系×ニューメタルの音楽性は時代と共に洗練され、さらに今回はアルバム全体にラテン的フィーリングを仄かに塗すという洒落の効いたアイディアも試してみせる。初期こそあらゆる音楽ファンから反感を買う格好の的であったが、長い活動期間を経てここまでアーティストとして成長するとは。

 


52. Boulevard Depo - OLD BLOOD

OLD BLOOD

OLD BLOOD

  • Boulevard Depo
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1833

Release: 2020

Origin: Russia

Label: Warner Music Russia

Genre: HIP-HOP

 


51. Miroslav Vitouš - Universal Syncopations

Release: 2003

Origin: Czechoslovakia

Label: ECM

Genre: Jazz

Jan GarbarekChick Corea、John McLaren、John McLaughlinJack DeJohnetteという錚々たるメンバーを従え、さらにはしっかりと各々の力が発揮されているのだから恐れ入る。確かな歌心を持ったメンバーによる暖かく親しみやすいプレイを堪能できる一作。

 


50. MIC JACK PRODUCTION - ExPerience the ill dance music

ExPerience the ill dance music

ExPerience the ill dance music

  • MIC JACK PRODUCTION
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1528

Release: 2005

Origin: Japan

Label: Ill Dance Music

Genre: HIP-HOP

 


49. Heinz Holliger - Clara Schumann: Romancendres

Holliger: Romancendres

Holliger: Romancendres

  • クリストフ・リヒター, デーネシュ・ヴァールヨン & SWRヴォーカルアンサンブル・シュトゥットガルト
  • クラシック
  • ¥1630

Release: 2009

Origin: Switzerland

Label: ECM

Genre: Classical

 


48. DIMLIM - MISC.

MISC.

MISC.

  • DIMLIM
  • ロック
  • ¥2444

Release: 2020

Origin: Japan

Label: DUM LABEL.

Genre: V-ROCK/Post-Rock/Djent

10年代メタル直系の硬質的なサウンド・プロダクションをベースとし、そこに00年代マス・ロック直系の煌びやかなギターフレーズや、BMTH・Issues影響下のEDMやR&B/HIP-HOPを意識したエレクトロニクスの導入……。こうして特徴をつらつら挙げていくとメカニカルで様式美的な音像を想像してしまうものだが、彼等の表現は何故こうにも柔軟で幅広いアプローチを有しているのだろう。

単なる既存ジャンルのコラージュに留まらず1+1=2以上の化学反応を発生させてしまった好例。解散が悔やまれる……。

 


47. Anouar Brahem - Blue Maqams 

Blue Maqams

Blue Maqams

Release: 2017

Origin: Tunisia

Label: ECM

Genre: Jazz

 


46. Eivind Aarset & Jan Bang  - Snow Catches On Her Eyelashes

Snow Catches on Her Eyelashes

Snow Catches on Her Eyelashes

Release: 2020

Origin: Norway

Label: Jazzland

Genre: Ambient/Future-Jazz

2年前辺りからノルウェー音響派ジャズ・シーンの作品にポツポツと触れているのだけれども、その中でも特に最近愛聴しているのが本作。長年共作を続けている盟友2人のデュオ作ということで、普段よりこじんまりとしたスタイルになるかと思いきや、むしろ音楽性の純度が高まったような気がする。彼等2人が参加した他の作品と比べてみるのもまた乙かな。

 


45. Avishai Cohen - Seven Seas

Seven Seas

Seven Seas

  • アヴィシャイ・コーエン
  • ジャズ
  • ¥1375

Release: 2011

Origin: Israel

Label: Blue Note

Genre: Jazz

 


44. ACE COOL - GUNJO

GUNJO

GUNJO

  • ACE COOL
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥2037

Release: 2020

Origin: Japan

Label: EVOEL

Genre: HIP-HOP

 


43. Issues - Black Diamonds

Black Diamonds - EP

Black Diamonds - EP

  • Issues
  • ロック
  • ¥1069

Release: 2012

Origin: US

Label: Rise

Genre: Post-Hardcore/Metalcore/Nu-Metal/R&B

メタル/ラウドロック・シーンに疎いリスナーからは「BMTHがニューメタル・リバイバルを巻き起こした」という構図で理解されているようだが、待ったをかけても良いだろうか?10年代初頭からメタルコア/デスコア・シーンのあらゆるバンド(Of Mice & Men, Suicide Silence, Emmure, My Ticket Home, Motionless in White, Sworn In, Islander, Dangerkids etc...)が各々の方法でニューメタルからの影響を楽曲に反映させていき、やがて10年代中盤に差し掛かると新世代のバンドが続々と台頭していった。(中には頭を抱えるような曲も少なくなかったが……)BMTHが売上・影響力の両面で頭一つ突出していた存在であったのは紛れもない事実だが、ムーヴメントの発生源はひとつのバンドというよりも、シーン全体の総意であったというのが僕の見解だ。

エレクトロニコア系バンドWoe, Is Meの元メンバーにより結成されたこのバンドは、ヘヴィに畝るバンドサウンドR&B/HIP-HOPのエッセンスと伸びやかなボーカルワークによって華やかに彩ってみせる。言ってみれば90~00年代ニューメタル・オリジネイターと同様の試みであるが、本作のポイントはクラブミュージック系の語彙をより高い解像度で″再輸入″したことにある。BMTHを始め、近年のニューメタル系バンドがやけに優等生的に洗練されているのは、彼等のようなバンドが無意識的にメタル・シーン全体のクラブミュージック・リテラシーを底上げしていたからだ。

本作は結成直後の1st EPということで荒削りな面も少なくないが、既にバンドの方向性は固まっており、その後の成功を予期するかのような爆発的エネルギーに満ちている。本作がお気に召した方は、バンドの到達点である2ndアルバム『Headspace』も是非。

 


42. Egberto Gismonti - Dança das Cabeças

Release: 1977

Origin: Brazil

Label: ECM

Genre: Jazz

 


41. THA BLUE HERB - TOTAL

TOTAL

TOTAL

Release: 2012

Origin: Japan

Label: Tha Blue Herb Recordings

Genre: HIP-HOP

僕にとって、日本国内で最も敬愛するアーティストのひとつ。2年前から心の拠り所として、生活の多忙さに苛まれた瞬間や、創作活動の傍、旅の道中などのあらゆるシチュエーションで、一体何度彼等の曲を再生したことか。時の流れとともに僕と彼等の精神性に距離が生まれてきたため、本リストではやや控えめなこの順位に配置したけれども、相変わらず彼等への想いの強さは変わっていないつもりだ。

現在は本作が一番のフェイバリット。1st『Stilling, Still Dreaming』に迫る熱量で、しかし″北から頂く″ためではなく″覆い隠されたままの日本の傷を曝け出してやる″ことを目的に綴られたリリックは、それ以前の作品からは想像の付かないほどに人間臭く赤裸々に響く。彼等の初期のパブリック・イメージは、冷徹かつ密室的なトラックと巧みなレトリックで編み込まれた複雑な歌詞構造。その当時のスタイルを期待する者も少なくない中、言葉選び・トラックの両面で世界に対して全方位に開けたスタイルを堂々と提示したため、リスナーからの評価は賛否両論真っ二つに分かれたという。僕自身、後追いで初めてアルバムを1周した際は「急に″等身大″になったな」「初期のような″闇″が無いな」なんて陳腐な感想を抱いたものだ。

しかし、コロナ禍を経てから本作を再生すると印象が全く異なってくる。SNSのタイムラインを少し眺めてみればいい。蔓延する醜悪なポピュリズムと相互監視。何処からともなく飛んでくる、事の経緯を顧みない揚げ足取りじみた罵声。社会正義の名の下に決行される私刑の数々。あらゆる文化に不要不急の烙印が押された現代においては、アーティストが″等身大″でいることが最も政治的であり、最も危険を伴う。事実、彼等は『未来世紀日本』『路上』など、自身を一人称に置かない寓話的・婉曲的な表現を構築する技術をとうの昔に習得していた。その気になればリスナーを煙に巻くことなんて容易だったはずだ。

なのに敢えて、彼等は自らの年齢的・金銭的な危機感も包み隠さず打ち明けながら、例え空元気だろうとも″等身大″のままステージ上に立ち、僕等全員を鼓舞せんと精一杯吠えてみせる。O.N.O.のトラックもいつになくメロディアスで人懐っこい。今年の8月頃、フジロック・フェスティバルで披露した切実な演説は今も忘れ難い。しかし、あのパフォーマンスは彼等が危機に迫られての突発的な行動ではなく、むしろ精神性においては一貫している……と、本作を聴けば自ずと理解できるはずだ。TBHRが現在に至るまでの源流は此処にある。

本作を締め括る2曲『BRIGHTER』『RIGHT ON』はTBHR流の激励歌。要約してしまえば「生きろ」「頑張れ」なんて3~4文字で済ませられる単純なメッセージを伝えるために、1997年のグループ結成当時から培ってきた15年分の力量すべてを費やてみせる。ひたすら己の限界のみを追究していた求道者3人が、明らかに不特定多数の″他者″に向けた詩を綴っている。日本語ラップ・シーンのカリスマではなく、一人の人間として、「東京」や「自分自身の内面」ではなく、「世界」という到底適いようもない概念を相手に真正面から勝負を仕掛けている。北の一個小隊が選択した蛮勇に、最大限の敬意を。

「いつかのHAPPY BIRTHDAYとLAST DAYの間 まだ終わりじゃない

 暮らし彩る笑いと涙 せっかくだから生かさなくちゃもったいない

 お互い様 ここまで繋いできた命じゃないか」

───12曲目『BRIGHTER』より

 

【NEXT】

【PREV】